「戦争体験者が記憶を語れる最後のチャンス」…戦後80年へ「語り部」育成に力、国の補助4倍で1億円に
文字や音声で記録
約10年前に戦争体験者による語り部活動を始めた宮崎県遺族連合会では23年度から、戦後生まれの会員らも活動に加えた。現在は40~60歳代の数人が地域の図書館や戦争の慰霊碑に足を運ぶなどし、戦争に関する知識を深めている。
兵庫県遺族会も数年前から語り部活動を本格化。今後は、戦後生まれの会員が戦争体験者から直接聞き取り、文字や音声で記録して継承に生かす取り組みを進めたいという。担当者は「語り継がれるべき戦時中の証言を残せる機会は今しかない」と語る。
約20年前から語り部活動を続ける秋田県遺族連合会の「戦没者遺児の会」の伊藤薫会長(90)は「終戦から80年近くたち、戦争がどんな犠牲やつらさをもたらすのかを想像しにくくなっているように感じる。人前で話すことにハードルを感じる人も少なくないため、語り部の担い手は思うように増えていない。文字で体験談を書き残す取り組みも進めていきたい」と話した。
映像・慰霊碑活用を 講話と組み合わせて
語り部育成に詳しい二松学舎大・林英一准教授(日本近現代史)の話「語り部は体験した戦争を感情の面でも記憶している。対面で語り継ぐことで、当時の様子がわかる場所や物だけでは理解できない記憶も伝えられる。聞き手と対話もできるため、共感を深めやすい。しかし、今後は語る側も聞く側も戦争を体験していないことが前提になる。当時の映像や地図を使ったり、慰霊碑を見に行ったりするなど、講話と他の手段を組み合わせて継承していくことが、より必要になるのではないか」