「ブログ」で話題の待機児童問題 東京・江戸川区が進める独自の子育て支援
「保育園落ちた日本死ね」と題されたブログがインターネット上に投稿され、同世代の若い母親らの支持を集めて話題になりました。このブログで指摘された待機児童問題では、給与など保育士の待遇面の悪さが一因とされていて、国会でも待遇改善を探る動きも出てきました。 【図解】「新保育制度」で子育てはどう変わる? 市町村が主体、認可施設を増やし質も改善 そんな中、国に先駆けて、独自に待遇改善を進めている自治体があります。その一つが東京都江戸川区です。
待機児童の根本は「保育士が足りない」
このブログは国会審議でも取り上げられ、これまで目立たなかった子育て支援や保育園整備といった政策に、多くの国民の目線を向けさせるきっかけをつくりました。国会でも審議されるようになり、急きょ子育て支援政策の検討に入った地方自治体もあります。一般世間の関心も増し、子育て環境をどう整備するのか侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が続いています。 これほど子育て支援・保育園整備が注目を背景は、待機児童問題が深刻化しているからです。ただ待機児童問題は今に始まった話ではありません。何十年前もから、ずっと問題視されてきた行政課題です。 行政は山積してきた課題を放置してきたわけではありません。さまざまな取り組みをしています。例えば、東京都は2001(平成13)年から認可保育所を補完するために、独自に認証保育園制度をスタートさせています。それでも、待機児童問題は深刻化の一途なのです。 少子化が問題視されているのにも関わらず、保育園が足りないというのは矛盾しているようにも思えます。しかし、これは決して矛盾ではありません。待機児童問題の根源は「保育園」が足りないのではなく、「保育士」が足りないことが理由だからです。極言すれば、保育園不足は行政がお金を出して建設すればどうにでも解消できますが、働いてくれる保育士がいなければ、待機児童問題は解消できないのです。
家賃補助など待遇改善進める江戸川区
待機児童問題は、給与などを含めた保育士の待遇面の悪さが招いたことが指摘されており、国会でも保育士の待遇を改善する動きも出てきました。一方で、国に先駆けて保育士の待遇改善を進めている自治体もあります。東京都江戸川区はその一つです。同区は昨夏に補正予算を組み、区内で働く保育士の家賃補助を始めています。 「もともと江戸川区は東京23区で子供がもっとも多い区だと言われています。そのため、昭和30年代から保育園の整備をはじめとする子育て支援政策には力を入れてきました。今回、保育士の家賃補助を実施するにいたった経緯は、待機児童を解消するために『保育士確保プラン』を策定したことに始まります」(江戸川区子ども家庭部子育て支援課) どの自治体にも言えることですが、保育士の給与は国が定めた公定価格に基づいていますが、その給与はとても低いのが現状です。そのため、保育士になるための学校を卒業しても保育士にならず、ほかの仕事に就いてしまう人が多くいるのです。 「江戸川区は保育士の経済的負担を減らすことで、保育士を目指す人が増え、江戸川区で保育士が増えれば江戸川区全体にもプラスになると判断し、保育士の家賃補助を決めたのです』(同) 同プランでは、区内に勤務する保育士に月額で最大8万2000円の家賃補助をすることになっています。また、保育士が結婚・出産で仕事を辞めてしまわないように、育児休業給付金の延長補助、保育士の子供が保育所や認定こども園に入園を希望する際には一定の配慮をするといった優遇策も明記されました。保育士の職場環境を充実させることで、江戸川区は保育士を確保し、それが区民のメリットにつながることが期待されています。