「ブログ」で話題の待機児童問題 東京・江戸川区が進める独自の子育て支援
45年以上前から独自に「保育ママ」制度
こうした保育士を確保する政策のほかにも、江戸川区は独自の子育て政策を実施しています。それが「保育ママ」と呼ばれる制度です。区の認定を受けた保育ママが、自身の家庭で行います。 「江戸川区は1969(昭和44)年から保育ママ制度を発足させました。これは“赤ちゃんは家庭で育てることが大切”との理念があるからです。保育園に預けると集団保育になってしまうので、0歳児は環境の変化に馴染めないことがあります。保育ママ制度は、保育ママが赤ちゃんと一対一で向き合うことになりますし、保育ママの家で面倒を見るので赤ちゃんは自宅に近い、家庭的な環境で過ごすことができます」(同) 保育ママ制度があるので、江戸川区の区立認可保育所では原則的に0歳児を受け入れていません。しかし、子育てのニーズは多種多様なので、仕事や家庭の事情でどうしても0歳児を預けざるを得ない場合もあります。その場合は、認定保育室や認証保育所、私立認可保育園に0歳児を預けることができます。 保育ニーズが高まった10年ほど前から注目されるようになり、「江戸川方式」と呼ばれ、ほかの自治体でも導入するケースが出てきています。2015年にスタートした国の「新保育制度」でも、この保育ママ(家庭的保育)は国の財政支援の対象になっています。
「子は地域の宝」保育園は迷惑施設にあらず
保育ママ制度は、赤ちゃんを家庭的な環境で育てるという情操的なメリットばかりではありません。副次的な効果をもたらしました。 「早くから保育ママ制度を導入していたので、江戸川区民の間に“子供は地域の宝である”という意識が浸透しています。そのため、子育てが終わった高齢者でも小さな子供に対して理解があります。今般、保育園は迷惑施設なので建設反対といった地域もあるようですが、江戸川区でそうした声は聞きません」(同) 江戸川区は子育て政策のソフト面で工夫を重ねていますが、ハード面の整備も怠っていません。今年4月に5園、7月に1園、「小規模保育所」と「認定こども園」をオープンさせる予定です。 ただ、ソフト・ハード両面で多重の対策を講じている江戸川区でも、待機児童問題を完全に解消できていないのが現状です。それほど待機児童は根深い問題なのです。今回、図らずも待機児童問題が注目を集めることになりました。政府には場当たり的な解消策ではなく、正面から待機児童問題と少子化対策に向き合うことを期待したいものです。 (小川裕夫=フリーランスライター)