KONAMI、セガ、バンナムが語る 長寿タイトルのブランド戦略【TGS2024】
「東京ゲームショウ2024(TGS)」開催1日目の9月26日、幕張メッセ国際会議場では「長寿タイトルのブランド戦略」と題したセミナーが開催された。コナミデジタルエンタテインメント『プロ野球スピリッツA』シリーズ、セガ『龍が如く』シリーズ、バンダイナムコ『鉄拳』シリーズを手掛ける各社の代表者3人が登壇した。モデレーターを務めたのは日経クロストレンドの平野亜矢副編集長。 【関連画像】コナミデジタルエンタテインメントの「プロ野球スピリッツA」シリーズプロデューサーの阿部洋介氏 「東京ゲームショウ2024」では、「長寿タイトルのブランド戦略」と題したトークセッションを開催。ビジネスデイの来場登録者向けに配信もされた。 近年、ゲームタイトルの販売方法は大きく変化している。ネットを介したダウンロード販売がひとつの主流になってきたことで、数年前に発売されたソフトが簡単に手に入るようになった。またユーザーに届いた後も逐次アップデートされ、新たな要素が加わることなどで、長くユーザーに遊ばれるようになっている。 以前のようにソフトを勢いよく売り切るという考えではなく、発売したIP(知的財産)を末長く愛してもらうというビジネスモデルに変化しているのだ。そういった意味でも「プロ野球スピリッツA」「龍が如く」「鉄拳」といった長寿タイトルは、ますますゲーム業界の中で存在感を増している。 2024年に発売から20周年を迎えたプロスピシリーズ。「プロ野球を徹底的に再現する」をコンセプトに産声を上げ、実際のプロ野球選手も多くプレイしている大人気タイトルだ。2015年にはスマホアプリ「プロ野球スピリッツA(エース)」がローンチされたが、同ゲームのプロデューサーを務めるコナミデジタルエンタテインメントの阿部洋介氏は「アプリゲームによって若者のユーザーが増えた。スマホひとつで、どこでも遊べるようになったことで、本当に幅広い範囲でゲームを楽しんでいただいている」と手応えを語る。 その上で「どこで・どう遊ばれるか」を意識して「プロスピA」はアップデートを重ねていったという。 「着目したのは電車の中です。1駅という短い時間の中でもゲームをする人はたくさんいる。その中でプロ野球の臨場感を1試合まるまる伝えることはできない。そうなった時、野球の面白さはどこかという点をシンプルに考えて“ピッチャーが投げる、バッターが打つ”に焦点を絞りました。さらに片手・指1本で操作できるようにこだわった。日々、ゲームの遊ばれ方が変化する中で、我々もそこにフィットしていかなくてはいけない」(阿部氏) 2005年にシリーズ第1作目が生まれたアクションアドベンチャーゲーム「龍が如く」シリーズ。主人公たちが策謀渦巻く裏社会の事件へと足を踏み入れていく。セガで同ゲームのフランチャイズ グローバルヘッドを務める山崎あした氏は、ゲーム実況動画などのコンテンツを視聴する専門の人「見る専」が増加していることで、ファンの熱狂度が高まっていることを明かす。 「ゲーム実況者の解説により『龍が如く』のストーリーを面白いと感じてくださる方が増えている。女性ファンも増えていて、グッズ販売の7割は女性という現実もある。ゲームから飛び出した先のIPとしての魅力をどう伝えるかを考えていかないと、ビジネスの広がりはこの先難しい」(山崎氏) シリーズ世界累計販売本数5800万本以上を誇る3D対戦格闘ゲーム「鉄拳」は、2024年に発売から30周年を迎えた。バンダイナムコエンターテインメントで鉄拳マーケティング&eスポーツプロデューサーを務める安田直矢氏は、ネットの普及によって「お客様に大容量データのゲームを届けるコストは限りなく0に近づいている。その一方で作る側は受け手のニーズに応え続けないといけない。これは非常に大変なこと」と指摘する。 「オンラインでタイトルを届けられるようになったが故に、1本のタイトルの寿命がどんどん伸びていった。パッケージを売り切って終わりではなく、売ってからもたびたび山を作り続けなくてはいけない。この点がかつてと大きく異なる発想になってくる」(安田氏)。 三者で共通していた考え方は、時代の空気の変化を敏感に感じながら、展開するビジネスモデルに常に手を打ち続けるということだ。今後もデバイスやネットワーク環境は、ますます高性能化が進んでいくことは間違いない。長く愛されるゲームにするには「愚直にユーザーと向き合い、良いサービスを提供し続けていくことが大事」と登壇者は口を揃えていた。 (文/中山 洋平、写真/中村 宏) なお、日経クロストレンドでは「東京ゲームショウ2024特設サイト」を公開中です。ぜひ、ご覧ください。 ・日経クロストレンド「東京ゲームショウ2024特設サイト」 https://xtrend.nikkei.com/sp/tgs/
中山 洋平