【乗り味の良さはバッテリーのおかげ?】ホンダのBEVモデル、N-VAN e:試乗記
街中を走りまわる配送業には軽BEVは最適な1台
商用車としての使い勝手はエンジン車と変わらないから、使用環境や経済的な条件をクリアできれば、企業や個人事業主の商用ユースにはオススメしたい。とくに1日の走行距離が少なく、ゴーストップが多く、街中を走りまわる配送業のクルマとしては、大気を汚さない軽BEVは理想的だと思われる。 ただ、個人の乗用ユースが中心で選ぶのなら、電気式パーキングブレーキ&ホールド機能やワンタッチパワーウインドウ、電動スライドドアなど、乗用車並みの快適装備が欲しくなる。パワーウインドウのスイッチはATセレクターの下にあるので、運転中などは少し使いづらい。 だがじつは配送業の人たちは、エンジンを止めてクルマから降りて荷物を持って走って届ける、これの繰り返しで、エンジンをかけてエアコンを入れてもクルマはすぐに冷えないから、仕事中はほとんど窓は全開なのだという。したがってパワーウインドウスイッチの位置も気にならないらしい。さらに、電動スライドドアは開閉に時間がかかるから、素早い荷物の積みおろしには不向きなのだ。 こうした快適装備を求めるならば、近い将来に登場予定の乗用軽BEV『N-BOX e:(?)』に期待するしかない。まあ、平日は個人の仕事で使って、週末は趣味グルマとして使うけれど2人しか乗らない、というなら不満は上がらないだろう。 N-VAN e:は発売されてからまだ半月ほどだが、受注は好調のようだ。しかも受注の約6割は今回試乗したe:FUNだという。もっとも、この割合はエンジン車のN-VANでも変わらないそうだ。ホンダの本音としては、配送業を中心にサービス/メンテナンス業など、多くの法人に使用してもらいたいところだろう。 個人ユース中心では、もったいない。N-VAN e:のような軽BEV商用車が街中に増えれば、人にも環境にもやさしい社会が広がるのでは。そんな思いを抱かずにはいられなかった。
ホンダ N-VAN e: FUN 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1960mm ●ホイールベース:2520mm ●車両重量:1140kg ●モーター:交流同期電動機 ●最高出力:47kW(64ps) ●最大トルク:162Nm(16.5kgm) ●バッテリー総電力量:29.6kWh ●WLTCモード航続距離:245km ●駆動方式:FWD ●タイヤサイズ:145/80R13 ●車両価格(税込):291万9400円
篠原政明(執筆) 田中秀宣(撮影)