「大腸がん」の新しい検査法、便潜血より良好な検出感度を示す 普及の期待高まる
大腸がんの発見に至る検査方法とは?
編集部: 大腸がんを発見するためにおこなう検査の方法について教えてください。 甲斐沼先生: 現在、日本では性別を問わず40歳以上の人が大腸がん検診の対象者となっています。大腸がん検診の流れとしては、まず最初に問診と便潜血検査をおこないます。便潜血検査とは、便に潜む血液の有無を調べる検査、いわゆる検便のことです。 大腸がんの検査というと、大腸を直接診察する検査を思い浮かべるかもしれませんが、大腸がん検診は便を検査することでがんにかかっているかどうかを調べることができます。 この検査で異常が見つかった場合、大腸内視鏡検査や注腸X線検査などの精密検査をおこない、がんであるか・異常がないかを診断します。 現在はこのような流れで、大腸がんの特定をおこなっているため、一番初めにおこなう検便によるがんの検出精度向上は、がんを発見する上では非常に重要です。 今回のワシントン大学らの研究により、従来の便潜血検査よりも精度の高い検査方法が開発されると、今後の大腸がん検査がより精度の高いものに変わり、人々の健康維持に大きく貢献できる可能性があります。
今回の発表内容への受け止めは?
編集部: アメリカのワシントン大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 通常の大腸がんの検診では、便を採取して、そこに微量の出血がないかどうかを調べる便潜血検査をおこないます。 しかし、便潜血検査は大腸がんなどの病変の発見に有効的ですが、痔や裂肛などの別の病気による出血でも同じように異常反応として陽性になってしまう欠点がありました。 今回のワシントン大学の研究を通じて、mt-sRNA検査は大腸がんと進行腺腫の検出感度が高く、従来の免疫便潜血検査と比較して感度を有意に改善することが認められ、大腸内視鏡検査で病変が認められない特異度は、既存の非侵襲的な分子スクリーニング検査と同等であることが判明しました。 一般的に、大腸がんは早期に見つかれば治る可能性が高いがんなので、検診で早期発見することが重要です。 便検体を使用して、複数のがんと関連のある遺伝子を調べる手法を取り入れたmt-sRNA検査がさらに開発されて広く普及することで、大腸がんなどの早期発見や早期治療につながる可能性が示唆されます。 また、日本では血液検体を活用してがんに関わる遺伝子を検出する研究が進められており、高い診断率が期待されている現状があります。 これらの検査が簡単に実現できるわけではありませんが、近い将来において血液や尿、便などの検査によって多くのがん疾患が早期的に発見できる時代が来ると考えられます。