200億円の公的資金期限内返済を半ばあきらめた「じもとホールディングス」…、ゾンビ化する傘下の「きらやか銀行」救済に未来はあるのか?
山形県のきらやか銀行と、宮城県の仙台銀行が経営統合して誕生した、じもとホールディングスが異例の事態に見舞われている。公的資金の注入によって国が保有していた優先株が、無配転落によって普通株へと転換。6割超の議決権を握られ、実質的に国有化されてしまったのだ。2024年9月に200億円の返還期限を迎えるが、返済延期の協議を行っている。この問題の核心にあるのが、きらやか銀行だ。 【図を見る】2024年3月期に大幅に増えたきらやか銀行の234億円の純損失
もはや借り換えにも近かった3度目の公的資金注入
じもとホールディングスは3回の公的資金注入を受けてきた。1回目がリーマンショック後の金融危機にあった2001年に200億円、2回目が東日本大震災で被災した企業の復旧を目的とした2012年の100億円、そしてコロナ禍で影響を受けた会社を支援する特例制度を活用した2023年の180億円だ。そしてすべての資金は、きらやか銀行に投入されている。 ポイントは、きらやか銀行が1年前に180億円もの公的資金の注入を受けていたことだ。これについては、今年9月に1回目の200億円の返済が迫っていたことから、実質的な借り換えだとの批判もあった。 半ば国が救済した形だが、きらやか銀行は返済に行き詰った。わずか1年で180億円の血税を“溶かした”に等しい。この銀行に何があったのか。 じもとホールディングスは2024年3月期に234億円の純損失を計上している。2023年3月期は70億円の純損失だった。このほとんどが、きらやか銀行の損失によるものだ。仙台銀行は安定的に黒字を出している。 赤字の主要因の一つが貸倒引当金だ。 貸倒引当金とは、銀行が貸し付けた資金が回収不能になった場合に備え、あらかじめ積み立てるもの。債権の額に対して適正な比率の引当金があれば、融資先が大量に倒産して不良債権の山ができても危機が回避できる。 ただし、貸倒引当金は会計上、負債として扱われ、前もって費用として計上する必要がある。 きらやか銀行には国が保有する優先株の配当があるため、安定的に利益を出さなければならない。少なからず引当金を回避するという力学が働いた兆候を見出すことができる。