なぜパリ五輪で“リレー侍”は「0秒17」差でメダルに届かず5位に終わったのか…3走から4走にあったバトンミスと根本的な走力差
現地解説を務めた高平慎士氏は、「展開としては読み通り」と日本のレースを評価しながらも、「強い選手たちの集まりのなかで、この差になるということは、この差を広げて(4走までに)こないといけない。チームの戦術として(もっとリードを広げて)レースを進めないとメダルは難しかったことになると思います」とメダルに届かなかった原因を分析した。 7月中旬に行われたリレーの公開練習で、日本陸連の土江寛裕短距離ディレクターは「2走・栁田」を軸に予選と決勝のオーダーを組むことを示唆していただけに、今回のオーダー変更には驚かされた。またサニブラウンの2走はフロリダ大時代に経験している程度。日本代表ではやっていない。 選手を送り出した後、メンバーから外れた栁田、苦渋の決断を下した土江コーチが涙するシーンが映し出された。予選のデータ、直前の調子などを考慮した結果、決勝のオーダーを組んだはずだが、最終的には桐生が話していたように〝サニブラウン頼み〟のチームになってしまった印象だ。 日本は2001年からアンダーハンドパスを採用して、世界大会で結果を残してきた。リレーではバトンパスや走順が注目されるが、日本代表の走力はどうなのか。 今回のリレーメンバーはサニブラウンが100m9秒96、桐生が9秒98、坂井と栁田が10秒02、上山が10秒31(200m20秒26)だ。 一方、優勝したカナダは200mをメインにする選手が中心で、1走・ブラウンは19秒95、2走・ブレイクは20秒04(100m10秒00)、3走・ロドニーは19秒96、4走・デグラスは19秒62という自己ベストを持つ。200mの日本記録が20秒03ということを考えると、走力では到底太刀打ちできないレベルにあることがわかるだろう。 「今回は全体を通して、物凄く悔しい結果になりました。100mは思っていた結果が出ず、4継も金メダルを目指して、みんなで切磋琢磨してきましたが、かないませんでした。でも、これで競技人生は終わりじゃないですし、今回の反省点を踏まえて、来年の東京世界陸上、28年のLA五輪では金メダルを獲得したいと思います」(サニブラウン) メダルに届かなかった「0秒17」という差はバトンパスの精度を高めることで、到達できる領域かもしれない。しかし、日本がリレーで本気に「金メダル」を目指していくなら、メンバー全員が100m9秒台、もしくは200m19秒台の走力をつけたうえで、バトンパスを磨いて勝負するしかない。 パリの地で“リレー侍”は大きな課題を突き付けられた。
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