「二人とも、こんなに長生きするハズじゃなかった...」何歳で死ぬのがベストだったのか? 自問し続ける老夫婦の「果てしない老後」
今年も終わろうとしているが、全国で高齢者による犯罪が大きく報道された年であった。 例えば、埼玉県蕨市の郵便局で発生した立てこもり事件。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 「僕は大人たちのオモチャでした…」17歳青年モデルが見た「屈辱の芸能生活」 「動機については裁判で明らかにされるでしょうが、高齢者の犯罪が増えているのは事実です。高齢者の人口が増えているのは事実ですが、それだけが原因とも簡単には言えない状況です。警視庁の調べによると1989年(平成元年)に2.1%だった検挙人員総数に占める高齢者の割合は、2019年(令和元年)には22.0%に上昇しているのです」。 恐ろしいがこれは現実だ。人生100年時代と聞こえはいいが、実際には健康、人間関係、お金…と問題は山積み。長く生きることが本当に幸せなのか、と頭を抱える人も少なくない。 今回はここまで長生きするとは思っていなかったと話す、ある老夫婦の告白をリポートしていきたい。 ……………………………………………
是山みどりさん(仮名・78歳)は、3歳年上の夫と訳あり息子と3人で関東近郊に暮らしている。 「自分の両親を早くに亡くしたこともあり漠然と自分も60歳くらいで死ねると思っていました」。 しかし、一向にその気配はないという。 「大きな病気もなく、ここまできてしまいました。もちろん、ちょっとした入院とかそういうのはありましたけど、癌とか糖尿病とかそういう大きなものは一度も。夫は数年前に癌を患いましたが、幸い発見が早く、寛解しています」。 夫との関係は良好なのだろうか? 「結婚40年以上経てば、良好とかなんとかそういう感覚はないですね。私たちの時代の女性の多くは、専業主婦です。私は本当は働きたかったんですが、近くに親類もいなかったので断念して専業主婦に。夫は俺の稼いだ金といって憚らないタイプ。今も家事はすべて私がやっていて、食事のときなんか、座って皿が並べられるのを待っている始末。もちろん離婚できる甲斐性が自分にあればよかったんですけど、そこまでの勇気やパワーがなくて。ずっと耐えてきたというほうが正しいかもしれません。唯一の救いは子供だったんですが…」。 みどりさんには息子が2人いる。長兄は、遠く離れた北海道に暮らしているそうだ。 「孫が3人もいるんですけど、なかなか会わせてもらえません。嫁は我が家にくることを嫌がっているみたいで、結婚してから来たのは2度来たきり。息子は1年に1度年末年始には帰ってきてくれますが、いつも1人。去年は10年ぶりに1番上の孫がディズニーランドに行きたいと来てくれましたが…。3人の孫に揃ってあってことはないんですよ、まだ」。 家で一緒に暮らしているのは次男だ。 「次男は48歳。独身です。仕事で失敗し、鬱病を発症したのが8年前。家に戻ってきて、1年ほど通院、療養をしてそれとなく回復はしました。ただ、定職につくことはできずアルバイトを転々としています。家にいるときは部屋にこもりきりでほとんど会話はありません。初めのうちは私たちも一生懸命、先のことなどを聞いていたんですが、息子は口を閉ざすだけ。今考えれば、仕事はどうするだとか、結婚はとか、言いすぎてしまったのかもしれません」。 口をほとんどきくことのない妙齢の息子との高齢者夫婦の3人暮らし。考えただけで息がつまる。