Mr.マリックさん×LUNAさんが親子で『徹子の部屋』に出演。家族の仲を語る「やる気をなくした娘を変えた〈テレポーテーション〉」
◆ニューヨークへ渡り大きな夢を見つけた 娘 ニューヨークに行ったのが19歳のとき。英語はまったく話せなかった。ハーレムにあるシェアハウスで3ヵ月を過ごすあいだ、アポロ・シアターの「アマチュアナイト」に出場したり……。 父 4位に入賞したんだよね。 娘 そう。でもそこではじめて、アジア人だという理由で人種差別を受けたり、貧困で苦しむスラム街から抜け出すために、自分よりもっとつらい環境で音楽を頑張ってる人たちを間近で見たり。とにかく人生観が変わるような貴重な経験をした。 父 たった一人で飛び込んでいったからね。好きなものを見つけたことから、すべてが始まっている。 娘 「マリックの娘」というのがなくなって、LUNAとしての自分を出せるのもすごくよかった。 父 帰国したとき、「どうだった?」と聞くと、それまでいつも目をそらしていた子が、僕の顔をまっすぐ見て、ニコッと笑いながら「面白かった」と。ああ、大人になって帰ってきたんだなと嬉しかった。 娘 自分のなかで何か芯が通ったというか。それまでは、この先どうしたらいいのかわからないという同じ悩みを抱える仲間とつるむことで、不安はいっとき解消されてた。 だけど、18、19歳となるにつれ、みんなが大学や就職と将来に向け進み出すなか、自分はまだ何も進んでいない不安を抱えて……。それが、音楽という大きな夢を見つけて変わった。 父 好きなことを見つけ、追求したいと思うと人間は変わるね。 娘 記憶に残る最初の音楽との出会いはというと、5歳くらいの頃、パパが素晴らしいから見なさいと買ってきてくれた、「We Are The World」のミュージック・ビデオね。 父 マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーを真似て、歌ってたよ。 娘 ブラックミュージックやヒップホップへの興味も、元をたどればそこにあるのかも。
◆やりたいことをして笑い声が聞ければいい 父 ヒップホップのアーティストとして活動するうちに、僕の娘であることが知られるようになった。二世ということでテレビのオファーもくるようになって、フジテレビの『笑っていいとも!』に出演。 ところが、生放送が終わったあと、わんわん泣いて帰ってきたね。化粧もすっかりとれちゃってて。プロデューサーさんに、挨拶ができないことだとか、めちゃくちゃ怒られたって。 娘 いじめられたと思ってた。 父 よく知っているプロデューサーさんだから電話で聞いてみると、「この業界のことをキツく指導しておきました」と。あえて、ガツンとやってくれたのがよかった。テレビの世界は面白おかしくやっているように見えるけど、みんなで真剣につくっているということを伝えてくれた。 娘 そのおかげで、今ではパパのこともすごくよくわかるようになった。マジックと音楽は違うジャンルだけど、私もアルバムを制作したり、ライブのステージ演出も考える。エンターテイナーとして、自分がつくったもので人を楽しませる点では同じ。 その大変さがわかるから、「そりゃ、寝るヒマだってないよな」とパパが忙しくしていた頃のことも理解できるようになって。私は曲をつくっているときは悶々としちゃうから、「ああ、だからパパもしゃべらなかったんだ」とかね。 父 新しいものをつくる大変さ、生みの苦しみを、少しはわかりあえるようになったかもしれないね。 娘 好きなことをやるっていう点でパパと私は似てるよね。5歳年上のお兄ちゃんは、私とは違って、真面目で、温厚で、堅実な仕事について、3人の子どもをもつよき家庭人。 父 同じ環境で、同じものを食べて育ったのに、どうしてこんなに違うのか。マジックよりも不思議だね。息子一家は、毎日、必ず家族5人揃って食事をすることが習慣だし。 娘 パパを反面教師にして。(笑) 父 「こういうことを僕もやらなきゃいけなかったんだろうな」と、息子や孫を見ていて思う。今、あらためて人生を教えられているような。 娘 それにしても、孫の前では昔の近づきがたいパパはどこかに行っちゃうよね。「じいじ」と言われながら、3人に突撃されて、頭をバンバン叩かれている姿なんて、どうしよう、見ていいのかなって……。(笑) 父 孫は子どもとは別なんだよ。 娘 たしかに私が子どもの頃、親子の接触は密ではなかったけれど、「あれはダメ、これはダメ」とすべて拒否するのでなく、自由にさせてもらったところは本当にありがたかった。 ママは「やりたいことが見つからないから、みんな学校に行くのよ」と言っていたけど、パパは「やりたいことがあれば、やれ」と。まあ、やりたいことを見つけてやるのって、実際には難しいんだけど。 父 僕自身が、やりたいことをやってきたからね。 娘 今考えると、パパは人生のポイント、ポイントで私を導いてくれたんだね。父親と子どもの関係って、それだけでもいいんじゃないかな。 父 子どもが自分の選んだ道を進み、笑い声を聞かせてくれるのなら、何をやってもいいと僕は思う。好きなことで食べていくのは大変だけどね。 あと、父としての願いがあるとすれば、結婚してもらいたい。普通の女の子としての幸せをつかんでほしい。 娘 それは、人生でいちばん難しい。最大の課題です。(笑) (構成=福永妙子、撮影=木村直軌)
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