「給食からパンが消えた…」東海3県、学校給食で広がる“地域格差”
この春から、三重県内の一部小学校でパンの提供が中止。実は今、東海3県の学校給食で“地域格差”が広がっているのです。
献立表から消えた“パンの日”
三重県大紀町にある『大紀町立大宮小学校』。音楽の授業終わり、子どもたちが一番楽しみにしている“給食の時間”がやってきました。この日のメニューは、麦ごはん、さばのトウバンジャン焼き、酸辣湯、とうもろこし、牛乳。実は、この学校では、当たり前だったあるメニューが、今年4月から突然姿を消したのです。
そのメニューとは、パン。献立表を見てみると、ご飯の日と麺の日はありますが、“パンの日”は1日もありません。この学校のほかにも、三重県大台町、福井県福井市、兵庫県丹波市などの小学校でもパンの提供が中止。 今、学校給食に何が起きているのでしょうか。
原因は「価格高騰」と「人手不足」
パンの提供中止について、『大紀町立大宮小学校』加藤真也校長は、「こちらにパンを届けていた業者が続けられないという話が、数年前からありまして、今年度から廃止するということになりました」と提供中止の理由を明かします。
松阪市から大紀町にパンを卸していた業者。往復に時間がかかることや人手不足なども重なり、今年4月からパンの提供を停止したのです。 給食のパンやご飯を提供する「全日本パン協同組合連合会」の鈴木賢市さんは、この現状について、「例えば、小麦粉や砂糖、油脂の場合だと、エネルギー価格の上昇。それから人手不足、後継者不足によって供給できていないのが現状」と卸業者の現状を話します。
今後の学校給食でのパンの提供について、大紀町では現在調整中とのこと。大台町では、学校独自でパンを提供してくれる場所を探し、2学期からパンの提供を再開する予定だということです。
“値上げ”と“無償化”、広がる給食の格差
給食に異変が起きているのは、今回取材した三重県大紀町だけではありません。実は今、東海3県のなかでも、給食の“地域格差”が広がっているのです。 材料費高騰により今年度から、東海3県の各自治体で「学校給食」に対するさまざまな変更が行われていました。 愛知県岡崎市では、献立によって豚肉が鶏肉に、鶏モモ肉が鶏ムネ肉に変更されるなど、“より安い”材料が食材として使用されるように。そのほか、岐阜県多治見市ではパプリカがニンジン・ピーマンへ、三重県津市では牛肉が豚肉・鶏肉に変更されることになりました。
各自治体で進む、食材の変更と給食費の値上げ。複数の自治体の給食担当者からは、「国からの補助がないと値上げせずにやっていくのは厳しい」という意見が多く寄せられています。 一方で、愛知県の安城市、豊田市などでは、子育て支援を目的とした給食費の無償化を実施。東海3県のなかでも、自治体の考え方や財政力によって格差が広がっていました。 文部科学省によると、自治体ごとの給食の詳細な実態調査を実施。無償化に向けたサポートも検討しているとのことでした。