のとてまり最高35万円 プレミアム6個、二重被災乗り越え
●金沢で初競り、生産者「報われた」 奥能登産原木シイタケ「のと115」の特秀品「のとてまり」の初競りは9日、金沢市中央卸売市場で行われ、最高級規格「プレミアム」の6個入り1箱(500グラム)が過去最高値の35万円で競り落とされた。2022年の31万5千円(8個入り)を上回り、能登半島地震と奥能登豪雨の二重被災で生産者が減る中での高値に市場は沸き返った。 のとてまりは、かさの直径8センチ以上、肉厚3センチ以上、かさの巻き込み1センチ以上で、特に形が優れ、肉厚4センチ以上がプレミアムに認定される。香りや歯応えが良いのが特長。 競りでは、きり箱に入れられたプレミアム6個が珠洲焼の皿に盛り付けられて最後に登場した。35万円の値が付くと、生産者や仲介人から歓声が上がった。 プレミアムを出荷した能登町白丸の田端二郎さん(59)は地震による津波で自宅が全壊し、現在は仮設住宅で暮らす。「諦めずに生産を続けた執念が報われて良かった。これでようやく前を向ける」と胸をなで下ろした。 青果卸業の堀他(金沢市)がさいたま市の鉄板焼き専門店「エムズロウ」の依頼を受けて競り落とした。9日夕方から同店で振る舞われる。堀他の浅市佳男執行役員(46)は「能登の食文化を首都圏に発信し、二重被災を風化させない思いで競り落とした」と話した。 この日は、のと115(5~8個入り)54箱が出荷され、うちのとてまりは10箱、プレミアムは1箱だった。プレミアム以外ののとてまりは1箱2万5500円~4万5千円の値が付いた。取引価格は例年の約2倍となった。 奥能登原木しいたけ活性化協議会によると、地震や豪雨でシイタケの原木が倒れたり、ビニールハウスに土砂が流入したりする被害があり、100人ほどいた生産者は6割程度に減った。のと115は3月末までに計1万5千個の出荷を見込んでおり、樋下(ひのした)義勝会長(79)は「二重被災を乗り越えて出荷された奇跡のシイタケで、生産者の努力が詰まった味を存分に堪能してほしい」と話した。