財務省書き換え疑惑で注目、国政調査権とは 坂東太郎のよく分かる時事用語
「証人喚問」や「参考人招致」も
ここまで文書提出についての国政調査権について述べてきました。他にも「各議院は、議案その他の審査若しくは国政に関する調査のために又は議院において必要と認めた場合に、議員を派遣することができる」(国会法103条)という権限も持ちます。 また憲法58条は「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め」られるとし(議院規則制定権)、衆議院規則に「委員会は、審査又は調査のため必要があるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる」、参議院規則に「委員会は、審査又は調査のため、参考人の意見を聴くことができる」と似た定めを明文化しています。これを「参考人招致」と呼びます。出頭するかしないか、何を証言するかは参考人の裁量で、誤った証言をしても罰せられないのです。
これが「証人喚問」となると、一気に厳しくなります。議院証言法に基づき、各議院で証人として出頭するよう求められたら原則として応じなければなりません。喚問は内容とつながりの深い委員会で行われます。当日、証人はまず「良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓う旨が記載」されている宣誓書を読み上げて署名・捺印します。昨年3月に証人喚問された森友学園の籠池泰典前理事長がこうした宣誓をしたことも記憶に新しいでしょう。そして最初に委員長が、次いで質問者となった議員が質問します。 ここまでの段階、すなわち出頭、宣誓、証言を正当な理由がないまま拒否した場合には、1年以下の禁錮又は10万円以下の罰金という罰が、偽りの証言をした場合には、3月以上10年以下の懲役の罰が下る可能性があります。 委員長がこうした罰にあたると判断したら、委員会の3分の2の賛成を得た上で検事総長(検察トップ)に告発します。後は起訴(裁判にかける)権をほぼ独占している検察の判断です。 国政調査権が及ぶ範囲がどこまでかという議論は絶えずあります。今回のケースで当初財務省がしきりに、森友問題を捜査中の大阪地検の捜査に影響を与える恐れがあると答弁で文書(原本を地検へ任意提出している)内容や「複数あるのかないのか」を明言しなかったことからも分かるように、「司法権の独立」を犯してはならないという説は有力です。 言い換えると準司法活動を行う検察の権限に干渉し、支障を与えるやり方でなければ許されるとも解せます。原本は地検が家宅捜索など強制捜査で手に入れた証拠ではないし、過去に還付したりコピーを認めた事例もあります。財務省がお願いすれば検察は同じ行政機関でもあるので、多分その程度はOKするはずというのが大方の見方です。