ドロミテにみんな大好き聖ニコラスが村にやってくる!
12月になると子供たちが楽しみにしているのはサンタさんからのプレゼントであろう。 しかしみなさんご存知だろうか?ゲルマン圏ではサンタクロースの他に聖ニコラスという聖人が12月6日にやってきて子供たちにお菓子を配るのだ。つまりこちらの子供たちはクリスマス期間中に2回もプレゼントがもらえるわけだ。聖ニコラスはいつもニコニコしているのでイタリア語で「私の足は聖ニコラス」と言うと「膝が笑う」「歩きすぎて足がガクガクする」という意味になるのがまた面白い。 そしてこの辺では前日に山羊の悪魔(諸説あり)と言われているクランプスがそれぞれの村にやって来て村に住むいたずらっ子を懲らしめるのだ。藁のほうきで悪い子のお尻を叩いたり、ムチで叩かれたりする。それでもいうことを聞かない悪い子はクランプスが乗ってきた車にあるオリに放り込まれて村の外れまで連れていかれるのだ。日本人の我々からしたらなかなか過激で問題にならないか心配になってしまうが、このクランプスに立ち向かう悪ガキどもは「今年は何をされるのか?」とワクワクして参加し、そして翌日学校で「俺オリに入れられて連れ去られて村はずれで解放されて家帰るの大変やったわ!」と自慢げに話するのだ。もちろんクランプスが怖い子は参加しないし、無理やり連れてこられた子たちにはクランプスも「ワー!」というぐらいである。 そんな悪ガキどものお楽しみの次の日には聖ニコラスが、なんとこのクランプスをお供として村に現れるのだ!聖ニコラスがいる時はクランプスは大人しいので小さな子たちも女の子たちも安心して広場に行ける。そして集まった子供たち一人一人に赤いセロファンで作られた袋の中にお菓子が詰まったものを配るのだ。子供たちは広場の真ん中で順番に聖ニコラスからお菓子をもらうのを待つ。まあ中には悪い子が横入りしたりとかすることもあるが、その時はクランプスがそいつを懲らしめる。その風景もまた面白い。 気になる聖ニコラスからもらう袋の中にはどんなお菓子が入っているのかというと、サンタの形をした・・・いやひょっとすると聖ニコラスなのかもしれないチョコレート。これがゲルマンのセンス宜しくサンタではなく時々ハニワを彷彿するようなデザインの時があり娘がよく閉口している。それもこの時期お決まりのリアクションといってもいいだろう。そしてマンダリンと呼ばれるみかんとピーナッツ、今年はワッフル風のチョコレート菓子が数個入っていた。これを毎年どんな小さな規模の村でも広場に集まった子供たち全員に配るのだ。赤い袋を手にした子供たちは皆満面の笑みで暗く厳しいドロミテの冬の時期に身も心も温かく光景である。もちろん村の悪ガキたちも一人ずつ同じようにお菓子をもらい嬉しそうにしている。聖ニコラスは子供たちの味方なのだ。 村の子供たちは南チロルの名産であるりんごから作られたホットリンゴジュースを広場で振る舞われ美味しそうに飲んでいる。普通のクリスマスマーケットだと温かい飲み物はグリューワインと呼ばれるホットワインなど子供たちが温かい飲み物を口にする機会が少ないが、ここ南チロルのクリスマスマーケットでは誰でも飲めるホットリンゴジュースがあるので小さな子供も寒い中美味しそうに飲んでいるのをよく見かける。 小さな村だからこそできる聖ニコラスの日のお祭り。こういう行事がいつまでも続いてくれたらいいなあと思う。
美波ラーナ