松井一郎・大阪府知事に聞く(全文2)大阪は伸びしろ大「投資魅力」がある
新しい鉄道路線事業が始動……神戸・京都もすべて一つの路線でつながるようになる
── 東京の一極集中が進んで、それを変えていくのはなかなか難しいと思います。大阪がもう一つの極になるということは、重要な鍵を握ってきそうですが、インフラや交通網などの面では、何か考えていますか。 大阪の場合、役所の制度において、長年、大阪市と大阪府の対立の構造がありました。その結果、成長するためのインフラは、もう40年近く動かすことができなかった。それは何かというと、大阪市というのは大阪府のど真ん中にある政令市ですから、鉄道だろうが、高速道路だろうが、ど真ん中に向かって延びていく。この真ん中を中心に環状に広がっていく。これが、成長のための鉄道や高速道路インフラ、当たり前の姿なんです。 ところが、大阪府と大阪市というのは、知事と市長が会議をするだけでも、2年間の調整期間が要るような、対立の構図がある役所でした。今は、橋下市長(橋下徹・前大阪市長)と僕の時代、そして僕と吉村市長(吉村洋文・現大阪市長)になって、日々やりとりをしながら、魅力ある大阪をつくるためのさまざまな協議をやっています。 橋下市長時代には、役所に、府市統合本部会議というのをつくりました。今は吉村市長とその会議をバージョンアップさせて、副首都推進本部会議という会議をつくっています。それを担う事務局体制も、大阪府と大阪市で職員を併任で事務局体制をつくってきた。 その結果どうなったかというと、もう40年以上動かなかった鉄道の重要な路線、これを大阪府では公共交通戦略4路線と呼んでいるんですけど、この重要な4つの路線について動きだすことができました。そのうち一つはもう着工済みで、もう一つについても事業としての決定を打っています。 一番のメインになる鉄道、これは「なにわ筋線」という関空(関西国際空港)から梅田につながる路線です。世界の都市では、国際空港から都心中心部まで、大体30分がスタンダードな時間なわけで、これをほぼスタートできる土台が、このたびつくることができたということです。これをやると、関空―梅田のみならず、神戸、京都、全て一つの路線でつながるようになります。 こういう成長のためのインフラ整備を、東京都はずっと続けてきたわけです。鉄道もしかり、高速環状道路もしかりですけれど、東京都は、時代時代に合わせて絶えず、前を向いた投資をしてきた。大阪は40年50年、止まってしまっていた、ということなんです。これを、この5年間で計画をつくり、今はその計画を実施する段階にまで来ています。 【メモ】 ・「公共交通戦略4路線」……北大阪地域と大阪都心を直結する「北大阪急行延伸」、環状型鉄道ネットワークを形成する「大阪モノレール延伸」、JR・南海の梅田直結で関西国際空港アクセスを強化する「なにわ筋線」、神戸・宝塚方面などから新大阪・なんばへアクセスする「西梅田十三新大阪連絡線」を重要な公共交通戦略4路線と位置づけ、早期の実現を目指している。