「過去最高じゃないですか」 全日本躍進、レンズ越しに見た中田璃士3つ目の握り拳に透けた闘志
THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム
今月開催されたフィギュアスケートの全日本選手権(大阪・東和薬品RACTABドーム)。合計263.99点をマークした中田璃士(りお、TOKIOインカラミ)は16歳にして2位に入る快挙となった。会心の演技で何度もガッツポーズを見せたが、173.68点を記録したフリーで収めた“3つ目”が今も私の脳裏に焼き付いている。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世) 【画像】「仕事人の顔」「スナイパーのよう」 全日本フィギュア会場にいたスターの鋭い眼光を収めた1枚(7枚目) ◇ ◇ ◇ まるで指揮者が演奏を止めるかのように、両手で拳を作った。 緊張感漂う最終グループ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」に乗って冒頭の4回転ループ、4回転トウループと着氷のたびに右手を強く握った。 私が陣取るカメラマン席の前へとなめらかに滑ってくると、連続ジャンプを跳んだ。着氷し、手をパンっと叩いてガッツポーズ。レンズ越しに見たその姿は力強くもあり、しなやかにも写った。 私が目の前で見たこの瞬間は、時間がゆっくり流れるように感じた。ここまでノーミス。ジャンプが決まればガッツポーズが出るに違いない。逃すわけにはいかないシャッターチャンスに集中した。 必死に追いかけ、綺麗に着氷。ガッツポーズとともに、冷静な中に燃える闘志が入り混じった表情も捉えた。中田がキス・アンド・クライで得点を待つ間、写真を確認した私も心の中で「ヨシッ」と小さくガッツポーズを作った。 「過去最高じゃないですか。(ガッツポーズを)こんなにやったのも」 16歳も照れ笑いを浮かべるほどの演技だった。「ループ降りて『よっしゃー』で、トウループ降りて『よっしゃー』で……」。4分間で幾度と見せた仕草はファンにも成功が分かりやすく伝わり、拍手も次第に大きくなっていった。 高校1年生にして、鍵山優真に次ぐ2位の大躍進。全日本をノーミスで滑り切る勝負強さが、ここで紹介しているフリー3つ目のガッツポーズにも凝縮されているように感じる。今でもレンズから見た光景を映像のように思い出せるほど、強く印象に残った瞬間だった。
THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa