YOSHIKIが米国公衆衛生局長官と対談「メンタルヘルスとの向き合い方、音楽がもたらす癒しについて」
X JAPANをはじめとするグローバルな音楽活動と並行して、長年メンタルヘルスの問題と向き合い続け、2021 年には音楽関係者のメンタルケア支援に10万ドルの寄付を実施するなどの活動を行うYOSHIKIが、アメリカのトップドクターとして人々の健康と福祉を促進する第21代米国公衆衛生局長官 (Surgeon General)、Dr. Vivek Murthyと対談を行った。二人のディスカッションの模様をレポートする。
メンタルヘルスの問題に取り組む理由
Vivek「YOSHIKIさんは音楽でキャリアを築くこと以外にも、若者のトラウマやメンタルヘルスにおいてオープンな会話をされています。どのような経緯があったんでしょう?」 YOSHIKI「私は10歳の頃に父が自殺をして、どう感情を処理したらいいかわからなかったのですが、母や友人がサポートしてくれたから今ここにいます。今もあがいている最中です。父親が不在の状態で成長した中で、何らかの形で不幸な生い立ちの子供を支援することにしました。日本、中国、香港でコンサートに招待したりする中で、2010年に、米国非営利公益法人501(c)(3)『YOSHIKI FOUNDATION AMERICA』を設立しました。人を助けることは自分自身の助けにもなります。2011年に東日本大震災が起きた時から不幸な子供のみならず災害の支援も行うことにしました」 Vivek「素晴らしいですね。災害に伴うメンタルヘルスの問題は語られないことが多いですが、復興後のメンタルヘルスは大きな問題です」 YOSHIKI「震災による津波の被害を受けた石巻を訪問した時、親を失った子供たちと出会いました。肉体的な傷は外から見えますが、内側の傷は外から見えません。でも、肉体の傷と同じように問題を引き起こします。10代はメンタルヘルスに苦しむことが多いですが、どんな解決策があると思いますか?」 Vivek「ふたつ重要なポイントがあります。1つ目はなぜメンタルヘルスの問題が起きているのかを知ること。2つ目は改善をするために何ができるのか。日本とアメリカは高いレベルの孤独感に悩まされている人が多いです。私たちのメンタルヘルスを苦しめているものは、ソーシャルメディアの普及によって、人と自分を比較しなければいけなくなったことです。ソーシャルメディアをチェックした途端に自分のことを悪く感じてしまうということに気付かなければいけません。 今はネガティブなニュースに溢れた時代です。それによって若者は未来に希望がないと思ってしまいます。ソーシャルメディア、テクノロジーとの関係性を再構築しなければいけないのです。特に睡眠中や人と会っている時、運動している時はとにかくテクノロジーから邪魔されずにゆっくり休むことが大事です。 また、人々は人間関係がどれだけ大事かを理解していません。人々は孤立感を感じると自殺したいと思うという科学的なレポートが昨年発表されました。孤独感によって心臓病等の病気を引き起こすこともあります。だからたとえば1日15分でもオンラインでも構わないので誰かと顔を合わせて話すことが大事です。SNSを安全な空間にすることが大事であり、政府は対策を講じるべきだと思います」