大山鳴動して「むじな」3匹? 「選挙ことごとく勝てない」よそに◇ジャーナリスト城本勝
大いなる誤算
乾坤一擲(けんこんいってき)、自民党内の根強い反対論を押し切り、トップダウンで公明党の主張を丸のみした首相・岸田文雄。「政治資金規正法改正案の今国会での成立は国民との約束だ。信頼回復のため思い切った決断をした」と胸を張った。だが、この大立ち回りも政権浮揚にはつながらない。それどころか岸田の自滅を早めるかもしれない。 【ひとめで分かる】政治資金規正法改正の自民案の変遷 そもそも、パーティー券購入者の公開基準を「10万円超」と「5万円超」のどちらにしようが、国民からひんしゅくを買った派閥の裏金問題の真相解明や再発防止にはつながらない。もちろん信頼回復など望むべくもない。
「現場の努力を無視」
確かに自民党にとっては、政治資金が集めにくくなるという深刻な問題であり、だからこそ副総裁の麻生太郎は「5万円超」では党内が持たないと強硬に反対したのだ。だが岸田はそれを振り切って公明党との連立維持を優先した。 「派閥解消や政倫審出席と、岸田は唐突な行動を取るので心配していたが、またやってくれた。自分の延命のために現場の努力を無視するようでは、もう誰もついていかない」。野党との交渉に当たってきた党幹部は吐き捨てるようにそう言った。法案成立と引き換えに、自分の足元を掘り崩していることに岸田は気付いていないのだろうか。
首相「お膝元」の隣でも惨敗
実は、大幅譲歩を勝ち取ったはずの公明党も、内部では不満が渦巻いている。結局「同じ穴のむじな」と見られてしまうからだ。 旧知の公明党地方議員はこう打ち明けてくれた。「3補選や静岡県知事選だけではない。自民と組んだ選挙がことごとく勝てなくなっている。5月26日、首相のお膝元、広島市隣の府中町の町長選挙でも、自公推薦の候補がダブルスコアで惨敗した。自民党の地方議員は『裏金問題で誰も本当の事を言わず、責任も取らないからだ。岸田は国民の怒りが分かっていない』と嘆いている。その怒りが公明党に向き始めていて、自民に協力すれば『同じ穴のむじな』としか見られないのだ。それが党幹部に分かっていない」と。