あなたは過敏性腸症候群(IBS)のどのタイプ? 効果的に治療を進めるポイントをチェック
「ストレス型」は、体質を受け入れつつ薬物療法や運動を
ストレス型のIBSの人たちは、真面目でなにごとも一生懸命に考える「良い人たち」です。ところが、一生懸命真面目に考えることがIBSにとっては裏目に出ることがあります。 ストレスで大腸が動き出す体質は「一生ものの体質」です。日常生活で経験するストレスより少し強いストレスで腸が動き、腹痛と下痢、まれに便秘に伴う腹痛を引き起こします。 大腸はメンタルへの影響、そしてメンタルからの影響を受けやすい臓器。IBSを治そうと真剣になると、治るどころか悪くなる皮肉な状態となります。体質が決まるのは思春期からですから、大人なら発症するまでは問題なく体質とつきあっていたはずです。 発症前と「体質」が変わるわけではないので、体質を理解してつきあうようにすれば発症前の状態に戻ることは可能です。自分の体質を理解し、そのことじたいは「体質だからしかたがない」と、考えすぎず、流すように、受け入れることが大切です。 「腹を固める」「腹が決まる」「腹が据わる」「腹を括る」などの言葉があります。これらは開き直って前に進むという意味で、IBSを克服するうえでの究極の言葉でもあります。「太っ腹」の人、つまり動揺しにくい人はストレス型のIBSにはなりにくいです。太っ腹になりましょう。 治療は、まずストレスに対処しながら薬物療法を進めます。また、運動はストレス対処にもなるので、この機会に一生継続できる適切な運動習慣をつけましょう。認知療法やカウンセリング、マインドフルネスも有効です。
「腸管形態型」には、定期的な運動の習慣と腹部マッサージが有効
腸管形態型のIBSは便秘、もしくは便秘で下痢を引き起こす状態なので、便秘の治療を進めます。 便秘型には運動や腹部マッサージが有効であることが報告されています。運動はリラックス効果からストレス型にも有効ですが、とくに腸管形態型に効果的です。運動していれば腸がゆらされるので、便が引っかかりにくくなるのがメカニズムだと考えられます。 大腸内視鏡検査で「ねじれ腸」や「落下腸」など、大腸の形に問題があってもおなかのトラブルが起きにくい人たちがいます。彼らに生活習慣を聞くと、ほとんどの人が定期的に運動をしています。「体質」なので、短期間しか続かない厳しいエクササイズは意味がありません。習慣として続けることがなにより大切です。 たとえば、ポピュラーなものとしてラジオ体操があります。ひねりやストレッチが入ったラジオ体操はIBSには適切な運動です。毎朝のラジオ体操第一からスタートし、20分以上の軽く汗をかく程度のエクササイズを週3回以上おこなうとよいでしょう。これは一生続けるスタンスでおこなうようにします。 ちなみに、ウォーキングはおこなっている人がとても多い運動のひとつです。ただ、心肺機能維持にはよいとしても、体幹をひねることが少ないため、便通には効果がほとんどないようです。 それから食事療法についてですが、これも継続できないと意味がありません。一日に20g程度の豆類、ひじきなどの海藻類、こんにゃくなどといった食物繊維摂取を目標として、バランスのよい食事をとるようにしましょう。 このように、「ねじれ腸」や「落下腸」とうまくつきあうには、運動や食事、朝の排便習慣が前提条件。それでも不十分な場合は薬の出番です。 〈食事制限や治療薬が効くのは、過敏性腸症候群(IBS)のこのタイプ〉へ続く
水上 健(国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長・慶應義塾大学客員講師(IBS便秘外来))