嶺岡牧の遺構保存を求め 鴨川市長に要望書提出 日本考古学協会埋文保護対策委(千葉県)
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は16日、鴨川市と南房総市にまたがる嶺岡牧の遺構の保存を求める要望書を鴨川市に提出した。小笠原永隆事務長ら3人が同市役所を訪れ、長谷川孝夫市長に手渡した。 同委員会によると、嶺岡牧は、江戸幕府8代将軍徳川吉宗が酪農を始め、首都圏にありながら保存状態が良く、江戸幕府直轄牧で唯一全貌を見ることができる重要な歴史遺産。 平成21年からの調査で、近世から牛馬の飼養区画を細かく区切り管理型放牧が行われていたことや、30間おきに出入り口となる木戸を設け日常的に住民が牧に出入りしていたこと、牧内の共有地の利用を通し江戸幕府と牧に隣接する村の住民とが互酬性により牧経営が維持されていたことなど、これまで確認できなかった牧経営の実態が明らかになったという。 しかし、価値を理解しない開発事業者や野生動物などにより、野馬土手や八丁陣屋跡などの遺構が損壊される事例が多発していることから、適切な保護を要望した。 要望書では▽嶺岡牧に関する遺構を周知する▽今後遺構の破壊行為が行われないよう、監視体制を強化、徹底する▽露出している遺構の3D測量など記録化を早急に行い、破壊された場合でも復元できるようにする▽国指定史跡をにらみ、遺跡の保存活用を行う▽行政内で対策を行うための体制を整備する――ことを求めており、小笠原事務長らは「遺構の重要性を市民に知ってほしい」と訴えた。 長谷川市長は「極めて重要な遺構と認識している。皆さんと守っていく体制をつくり、いろいろな機会を通じて市民に周知していきたい」と話していた。 要望書は、文化庁や県、南房総市にも提出した。