「トイレットペーパーがセットできない!? 自作の棒で乗り越えまた一歩進化」稲垣えみ子
元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 【写真】稲垣さん自慢のトイレットホルダーがこちら! * * * 先日、トイレットペーパーが切れたので近所のドラッグストアへ。といっても軽々には手を出さない。今や最小限のモノで暮らすことが何より好きな人間に成り果てたので、山ほどの製品をじっくり吟味し、最も紙が薄く最も硬そうで最もギュー巻きしてある芯なしロール6個入りを買う。ヨシこれで1年はもつな多分。 ところが早速帰宅してセットしようとしたら……ん? ペーパーホルダーの棒が太すぎて入らない……。 床の上に直接置いて使うことも考えたが、毎日のことだしなんだかなあ……ええい仕方がない。これを機に細い棒のホルダーを買うか。たかが棒なので高くもなかろう。ネットで調べると確かに100円ちょっとで買えると判明。だがいざ買おうとすると購入手続きで名前やら住所やらパスワードやらを入力せねばならず、いや100円の棒を買うのに大袈裟すぎるだろうとウンザリし、そこでハッと我に返ったのでありました。 たかだか棒を手に入れるのにネットでお取り寄せしようとしてる私こそ、間違いなく大袈裟すぎるんじゃ? ってことで、自分で作ってみることにしました。 作るったって、割り箸みたいな細い木の棒をホルダーに合うサイズにカットすれば多分いけるはずという雑な設計。我が家にはノコギリがないので日曜大工好きな近所のカフェ主人に相談すると、それならちょうどいい棒があるヨと、割り箸より硬そうな木の棒をゴソゴソ奥から持ってきて、ほど良い長さにカットしてくれた。あとは自力で頑張る番だ。カッターナイフで両端を鉛筆のように円錐形にしてヤスリで滑らかにし、ドキドキしながらセットしてみたら……いや全然いけるじゃん! 棒が伸び縮みしないとセットしづらいんじゃないかと心配したが、ホルダーそのものがしなるので単純な棒で全然OK! ……っていうただそれだけの話なんですが、こういうのってどんなに高価でおしゃれな製品を手に入れるよりずーっとずーっと気分が上がる。私はまた一歩進化したのだ。 いながき・えみこ◆1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。著書に『アフロ記者』『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』『家事か地獄か』など。最新刊は『シン・ファイヤー』。 ※AERA 2024年11月4日号
稲垣えみ子