どうして?「赤字なのに操業を継続する」企業が多いワケ【経済評論家が解説】
企業が赤字でも操業を続けるワケ
企業のなかには、赤字なのに操業を続けているところも少なくありません。「赤字なら操業をやめればいいのに…」と考える人もいるでしょうが、赤字でも操業を続けたほうが赤字が減る場合も多いのです。 上記のレストランの例で、客が毎日50人しか来なければ、毎日5万円の赤字ですが、操業をやめてしまえば客数がゼロになり、毎日10万円の赤字になってしまうので、操業を続けているわけです。 客がゼロならば固定費が全額赤字ですから、定食の値段が材料費より少しでも高いなら、操業した方が得だ、ということになるわけです。ライバル店との値引き競争が激しくて、材料費より定食の料金が安くなってしまえば操業をやめたほうが得ですが、そんな店は多くないでしょう。 以上が基本的な考え方ですが、操業を停止するか否かを検討する際には、もうひとつ考えるべきことがあります。それは「期間」です。
固定費と変動費の分類は「期間」のとらえ方で変化する
今日1日のことを考えれば、客が1人も来なければ浮く費用は材料費だけなので、上記では材料費を変動費、それ以外を固定費としましたが、考える期間を延ばすと、固定費が変動費に変化する場合があります。 店の操業を停止する場合には、正社員はクビにできなくてもアルバイトなら調整可能ですし、空調等の費用も不要ですし、店を借りている場合にはテナント契約を止めることができるかもしれません。 そうだとすれば「固定費は正社員の給料だけ」ということになるかもしれません。それ以外の費用はすべて変動費だとすれば、「ライバルとの値引き競争によって定食の料金が変動費より安くなった」というケースもあるでしょうし、そうなれば操業を停止することになるでしょう。 実際には、店を借りる契約は契約期間が定められ、簡単には止められないでしょうから、契約期間中は営業を続け、契約期間が終了したら営業を終了する、といったところが現実的なのかもしれませんね。
食べ放題の店が儲かるのも、固定費と変動費で説明可能
世の中には、食べ放題の店が数多くあります。来てほしい少食の客は来ないで大食いの客ばかり来るでしょうから、さぞかし経営が苦しいと思う人もいるでしょうが、実際には食べ放題の店が多い事を考えると、儲かっているのでしょう。 それは、他人の3倍食べる客が来ても、材料費が3倍かかるだけで、店を借りる費用等々は増えないからです。定食3人前を食べる客が定食2人前の料金を払ってくれるとすれば、客は得した気分になりますが、店も材料費が3倍になるだけなので、結構儲かっているのかもしれません。 食べ放題の店が儲かる理由はほかにもありますが、それは別の機会に詳述しましょう。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義