11月の米人員削減、最多は自動車部門 トランプの関税やEV補助金の方針が影響か
米再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの最新統計によると、米国を拠点とする雇用主が11月に発表した人員削減数は5万7727人だった。11月の人員削減数としては2008年の金融危機以降、4番目に多く、今年1~11月の累計人員削減数は前年同期比5%増となった。 11月の人員削減数は4万5510人が削減された前年同月から26%強多く、部門別では自動車部門が1万4373人で最も多かった。 チャレンジャーのアンドリュー・チャレンジャー上級副社長は自動車部門の雇用縮小の理由として、国外に工場を持つ米メーカーに影響を及ぼす関税が導入される可能性、中国の電気自動車(EV)メーカーとの競争激化、EVへの政府補助金の変更といった難題を挙げた。 今年1~11月の累計人員削減数は72万2566人で、新型コロナの流行が始まった2020年を除くと2009年以降で最多となる。 今年最も人員を削減したのはテクノロジー部門で(13万701人)、ヘルスケア部門(4万7249人)、自動車部門(4万5820人)と続く。 人員削減の理由としては、企業の大半がコスト削減を第一に挙げており、第二に市場・経済状況、第三に事業廃止だった。 米国を拠点とする雇用主は今年これまでに76万1954人の採用計画を発表しているが、これは昨年同期比2%減で、2015年以降最も少ない。 チャレンジャーが追跡調査している30業種のうち、今年に入って人員削減が減少した業種は11種だ。それ以外の業界はすべて前年よりも人員を削減しており、中でも政府機関の人員削減は前年比2030%増と最も増えた。 米国政府が6日に発表する11月雇用統計では、失業率は4.2%と10月と9月の4.1%から上昇すると予想されている。10月の労働市場は大幅に悪化し、新規雇用者数はわずか1万2000人にとどまった。また、4日に発表されたADP雇用統計によると、11月の民間雇用者数の伸びは予想を下回った。 ドナルド・トランプ次期米大統領はEV購入者に対する税額控除の廃止を示唆している。また、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課す方針も明らかにしており、米国内で販売される自動車の価格と入手のしやすさに影響を及ぼす可能性がある。 経済学の教授らは10月の研究で、EV税額控除の廃止によりEV販売は最大27%減少し、リースは半分以下に落ち込む可能性があると警告した。カナダとメキシコからの輸入品への関税について、トランプは両国が麻薬や不法移民の米国への流入を減らす取り組みをするなら見送ると述べている。だが、関税が現実のものとなれば、米国内の自動車価格は数千ドル上昇する可能性がある。フォードやゼネラル・モーターズ(GM)など一部の米大手自動車メーカーはカナダの工場に数十億ドル投資している。
Mary Whitfill Roeloffs