バスの運転席をガン見できる助手席最前列の「オタシート」! インドネシアのそれはマニアが狂喜するレベルだった
インドネシアはバスオタにとっては天国かもしれない
毎年インドネシアの首都ジャカルタ近郊で開催されるのがGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー/2024年は7月18日から28日の会期で開催された)。GIIAS2024では、中国系完成車メーカーなど、出展社が多くなったこともあり、会場横の駐車場の一部を使い、仮設展示コーナーが設けられた。その仮設展示コーナーに、インドネシアでのエネルギー大手となる「インディカ・エナジー」の子会社である「カリスタ・ヌサ・アルマダ」の「KALISTA」ブランドが広いスペースを確保して商用BEV(バッテリー電気自動車)を展示していた。 【写真】バスオタ歓喜! これがインドネシアのオタシートだ! また、展示場ではバス車両が目立っていたのだが、そのなかでひときわ異彩を放つデザインを採用していたのが、中国SAGブランドのBEVバス「オールスター・エレクトリック・コンパクト・バス(以下オールスターバス)」であった。 日本各地で見かける運転席を持たないフレンチブランドの自動運転バスを大きくしたようなそのスタイルは、かなり個性的なものであった。 外観を見ていると、事情通が「車内に入るともっと面白いよ」というので入ってみた。すると、「運転席を見てごらん」といわれたので視線を移すと、運転席の真横に客席(通称オタシート)が用意されていた。しかも、前方に向けて座席があるのではなく、運転席に向かって座るようにレイアウトされているのである。しかも、それが2席用意されていた。まさに究極の「オタシート」がそこにあった。 オタシートは日本の最新の路線バスでは諸般の事情で設置されないケースが目立っている。扉のある側の最前列席(オタシート)は、いわゆる「バスオタク(愛好家)」にとっては、間近で運転席及び運転士さんの運転風景をガン見できるプラチナシートのようなもの。
運転士は常にバスオタからの興味の視線にさらされる
ただ、運転士さんから見れば、凝視されてしまうのもかなりのプレッシャーだが、運転風景を動画撮影する愛好家も多く、運転士さんのなかにはオタシート廃止論者が多い。 そんな日本からGIIASにやってきて、このオールスターバスのオタシートを見た自称「バスオタ」の筆者は、それはもう「すごいものを見た」と感動した。事情通はその様子を見て、「こんなに喜んでもらうとは思わなかった」とあとで語ってくれた。 オールスターバスは、日本でいえばコミュニティバスサイズとなるので決して大きくないので車内も狭い。実際にオタシートに座ってみると、運転士との距離があまりにも近いことに驚かされた。筆者が運転席に座り、事情通にオタシートに座ってもらうと、オタシートからのものすごい圧のようなものを感じてしまった。仮にこのオタシートに愛好家以外の人が座っていたとしても、運転士には結構なプレッシャーになることは間違いないだろう。 車内全体を見渡すと、日本のコミュニティバスと比べると座席が目立って多いことに気がついた。もちろん展示車の座席レイアウトしかないわけではなく、購入した事業者ごとにレイアウトが選べるようになっている。 「インドネシアではできるだけ客席を多く確保する傾向があるようだ」とは事情通。この車両のオタシートに話を戻すと、一般的に進行方向に向けて座席を設ければ1席しか用意できないが、運転席に向けて設置すれば2席確保できるというロジックでこのようにレイアウトされたと見たほうがよく、けっして愛好家のためのレイアウトではないようだ。 筆者も日本では好んでオタシートに座っているが、常時運転士を見つめるように座るこのオタシートは座りたいと思う反面、はたして乗車中ずっと運転風景を見続けることができるかという不安な気もちにもなってしまった。
小林敦志