「もし彼が完璧な仕事をしていれば、アルファタウリは7位になれたかもしれないが…」

　番狂わせということでは、シーズンの大部分で最も性能が劣る車といわれた「AT04」を駆って序盤に2度ポイントを獲得した他、入賞圏内に肉迫する力走を見せ、アップデートが効果を発揮した後半戦になると、ファステストラップ記録（アメリカGP）、アルファタウリ初のスプリント入賞（ブラジルGP）、ドライバー・オブ・ザ・デイ受賞（アブダビGP）などの快挙を成し遂げた角田裕毅もその対象に相応しいかと思われるが、彼には「今季最も成長したドライバー」の称号が与えられている。 「ガスリーが去ったことで、角田と新加入のニック・デ・フリースのラインナップとなったアルファタウリにはかなりの空白が生まれたが、ユウキは見事に立ち上がり、チームのリーダーらしく振る舞い、速さと印象的な安定感を見せた。波乱の中でチームの中心人物となり、チームメイトが入れ替わり続ける状況の中で頼りにされた」 「ダニエル・リカルドがメキシコGPで挙げた7位入賞が、チームにとっての最高結果かもしれないが、ユウキは予選とレースの両方で、このオーストラリア人ドライバーを上回っていた。ダニエルについては2025年のレッドブル昇格について多くの噂が流れているが、ユウキも素晴らしいシーズンを送ることで、これに加わることがあるかもしれない」 　このように、F1ドライバーの先輩から称賛を受けた角田。前述の通り、厳しい環境の中でしばしば望外な結果をチームにもたらした日本人ドライバーは、しかし一方で本来獲得していたはずの幾つかのポイントを、ミスや不運によって手にし損ねたのも事実であり、目標としていた7位の座をウィリアムズとのポイント差わずか3で逃したことには悔しさも残る。 　イギリスのモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、「ユウキは少しばかり、予測不能な存在だ。我々は今なお、彼の無線での怒りっぽい様子をよく耳にしている。彼は落ち着きを取り戻し、パフォーマンスを安定させる必要がある」と指摘している。以前、同メディアは「もし彼が完璧な仕事をしていれば、アルファタウリは7位になれたかもしれないが、チームがそこまで上昇できたのは、角田の功績によるところが大きいのも事実だ」と高く評価を下しており、さらなる進化への期待だとも言えよう。 　一部では角田よりもリアム・ローソンを推す声もあるようだが、このニュージーランド人ドライバーが数戦で見せたパフォーマンスから、そういった意見が生まれるのは不思議なことではなく、角田は来季もまた、次なるステップに向けて自身の価値を周囲に認めさせるための戦いに臨むこととなる。 構成●THE DIGEST編集部