トヨタの実証都市、ウーブン・シティが動き出す…「幸せを量産する」(豊田会長)
車のあり方変える/高度SDVの実現 繰り返し改善必要
トヨタが実証都市を整備するのは、ソフトウエアが車のあり方を大きく変えようとしていることも一因にある。高品質な「走る・止まる・曲がる」という従来の付加価値の追求は不変だが、これらに加えソフトを通じて多様なサービスを提供できるソフトウエア定義車両(SDV)の重要性が増している。 自動運転を実装するにもソフトのブラッシュアップは欠かせない。高度なSDVを実現することが、今後ユーザーから選ばれる車の要素になるのは間違いなく、ソフト開発をめぐる世界的な競争は待ったなしの状況だ。 一方でスマートフォンなどと異なり、車は簡単に再起動できないため、より高次元の信頼性が求められる。さらに安全性や規制の面から見ても、新開発のソフトを即座に社会実装するのは現実的ではない。最先端のシステムやサービスを確実に実現するには、ソフトを「スクラップ・アンド・ビルド」しながら繰り返し改善する必要がある。その実証の場がウーブン・シティとなる。 これまでもトヨタはさまざまな環境下にあるテストコースを整備し、車を鍛えてきた。24年には車両の研究開発と試験走行、整備を一体で行える施設「トヨタテクニカルセンター下山」(愛知県豊田市、同岡崎市)を全面開業。この開所式でも豊田会長は「道を走って、壊して、直すことこそ車づくり」と強調していた。 「走る・壊す・直す」の好循環は、何もパワートレーン(駆動装置)や車体などのハードの開発にとどまらない。ソフトについても同様だ。ヒトやモノ、情報、エネルギーとつながったウーブン・シティでこれを磨く意味は大きい。