いったい何様…?仕事ができる「メーカー勤務」40代上司のじつは「本人だけが知らなかった」残酷な事実
公認心理師として行政や企業などの職場で約1万人の悩みを聴いてきた舟木彩乃さんは、相談ごとの中に、発達障害グレーゾーンの特性から来る問題がひそんでいることが多いと話します。 【マンガ】息子の暴力が止まらない…発達障害と向き合う「母の悩み」 病院で診断を受ける「発達障害」とはちがう「グレーゾーン」とはどのようなものなのか、周囲はどのように対応すればよいのか『発達障害グレーゾーンの部下たち』より一部抜粋・編集して解説します。
上司がグレーゾーンだった場合
ここまで、グレーゾーンの社員の上司など、指導役となる人がとるべき対応法を解説してきました。次は、上司がグレーゾーンだった場合に、部下がどのように対応すれば良いかについて触れていきます。 職場で自分のやり方を押しつけたりする上司に悩んでいる人もいるのではないでしょうか。最近はカウンセリングをしていても「上司がグレーゾーンかもしれない」という相談が増えてきました。 その多くは、パワーハラスメントをしている上司が、発達障害やグレーゾーンではないかと疑う内容です。このような相談は前々からありましたが、今年に入ってから一気に増加しています。 今年に入ってから行政機関や民間企業でのパワーハラスメントの話題が相当増えており、連日のようにメディアで取り上げられていることも、相談が増えたことに影響しているのかもしれません。 パワーハラスメントを働いている人には、議員や首長など選挙で選ばれた人も含まれています。 公職にある権力者のパワーハラスメントは、当然マスコミの取り上げるところとなり、報道をきっかけに類似する案件などが、行政、民間を問わず噴出することになります。このようなハラスメントの背景には、実際に、上司の発達障害やグレーゾーンが関係していると思われることも多々あるのです。
ASD特性のグレーゾーンの上司Sさん
Sさん(男性40代)は、某メーカーのマーケティング部の管理職です。彼は、緻密なデータ分析を得意としており、自社製品の売り上げだけでなく、経理部門にも貢献してきました。また、異動などの際には、自身が蓄積してきたデータ分析の手法をマニュアル化するなどして、後任への引継業務も完璧にこなしてきました。 このようなSさんのスキルや仕事ぶりを尊敬する社員がいる一方で、Sさんと一緒に仕事をしたことがある人たちからは、「完璧主義」や「彼はいったい何様?」という声があったのも事実です。 実は、Sさんの実績からいえば、もっと早くに管理職に就いていたはずでした。昇進が遅れたのは、Sさんと一緒に働いたことがある上司や同僚から、人事部門に「同じチームにSさんがいると仕事がしにくい」という相談が寄せられたことが大きな要因です。また、本人も管理職になって部下を持つことを望まなかったという経緯があります。 現在、Sさんには数人の部下がいます。部下たちはSさんの仕事ぶりや実績を尊敬しながらも、「こだわりが強い」「冷たい」「パワハラ系」などと陰口をたたいていることが社内にも広まっているようです。筆者は、Sさんの部下数名からヒアリングし、Sさん本人、また人事部門とも話す機会がありました。 部下たちから聞いたところによると、次のようなことがあったそうです。 …つづく<部下の気持ちがわからない…見下し発言を連発する「発達障害グレーゾーン」の上司が、じつは抱えていた「意外な悩み」>では、上司であるSさんについてどのような対策あるのか、具体的にお伝えしつつ、職場の人間関係を円滑に進めるための解決策も明かします。
舟木 彩乃(ストレスマネジメント専門家・公認心理師)