【どうなる日本のエネルギー政策】連立・政策協議によっては経済も生活も行き詰まる、ドイツの脱原発路線から問う
できるのか50年までの脱原発
自民党の政策は石破茂首相の考えを反映していないようだ。石破首相は自民党の総裁選の候補者討論会では地熱と小水力発電を取りあげ、電力需要増には省エネで対応との考えだった。所信表明演説でも地熱を取り上げていた。 日本の電力供給量の0.3%しかない地熱にポテンシャルがあっても主要電源への道のりは遠いし、小水力はコストが高い上に、数千設置して原発1基分程度だ。石破首相はエネルギーのことを何も分かっていないとの声も党内から聞こえる。 鳩山由紀夫首相時代の民主党政権は、2009年12月に閣議決定された新成長戦略(基本方針)「輝きのある日本」の中でグリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国を謳い、20年までに50兆円の環境関連新規市場、140万人の環境分野の新規雇用創出を打ち出した。立憲民主党の政策はまるでデジャブ、焼き直しと言わざるを得ない。失敗した政策を打ち出しても当時の民主党政権を知る有権者の共感を得ることはできないのではないか。 上記の主要政党の政策では触れなかったが、れいわ新選組は、即時の脱原発を主張している。共産党は30年度に石炭火力と原発をゼロにするとしている。そうすれば確実に停電し、電気料金は大きく上昇する。 脱原発後火力発電所の利用率を上げるしかないので、二酸化炭素の排出量も増え脱炭素も進まない。 実現する可能性がないからこそ掲げられる政策だろう。実現したらたちまち産業と国民生活は立ち行かなくなる。 自民、維新、国民民主党が原発の活用に前向き、公明党は時期を定めない脱原発、立憲民主党は50年までの脱原発を目指している。 では、立憲民主党が掲げる50年までの脱原発は可能なのだろうか。脱原発を実現したドイツを見れば参考になる。
日本の事情は脱原発のドイツとは違う
11年3月の福島第一原発事故の直後3月27日に行われたドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州の州議会選挙で、当時のメルケル連邦政府首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)は第一党の座を維持したものの、脱原発を党是とする緑の党が第2党に躍進した。緑の党は第3党の社会民主党(SPD)と組むことにより、58年にわたったCDU政権に代わりドイツ史上初の緑の党の州首相を誕生させた。 州議会選挙の結果も受け、メルケル首相は脱原発に舵を切り、17基の原発のうち8基を直ちに、9基を段階的に22年までに閉鎖する脱原発を提案した。連邦議会の80%以上の賛成によりドイツの脱原発が決定したが、その背景は日本の事情とは大きく異なる。 一つは、ドイツでは電力の連携線が周辺国とつながり、電力の輸出入が可能なことだ。周辺国に供給を依存することが可能だ。 二番目は、ロシア産天然ガスと国内褐炭の存在だ。ロシア産の天然ガスを直接輸入する海底パイプライン・ノルドストリーム1は11年の脱原発決定時点で開通直前だった。安価な天然ガスが安定的に調達可能になった。 国内産の褐炭を利用する発電所を38年までに閉鎖する予定だが、今から10年以上も国内産化石燃料に依存可能だ。 三番目は、再エネ設備の拡大による供給力の確保だ。00年に導入された固定価格買取制度により、太陽光、陸上風力発電設備の導入は当時急増していた。