弱者のはずだった「テレビ東京」が…元テレ東プロデューサーが絶好調の古巣にあえて苦言を呈する訳
「弱者」だったテレ東が…株価は、TBSの次に
’24年3月1日16:00現在の民放各社の株価は、TBSが筆頭の4057円であるが、テレ東が続いて3015円と日テレの2144円より高い。そんな評価も、テレ東が脱成長時代にふさわしい「サイズ感」であること、また「エコやSDGs的な考え方」にフィットした方針で運営されているように見えているというのが理由だと私は分析している。 「ダウンサイジング」という組織のスリム化。そのことで、〝起こりえないことが起こる〟VUCAの時代に臨機応変にそして柔軟に、トラブルやリスクに適応できている。それが、私が観るいまのテレビ東京の現状である。 しかし、本稿の最後に苦言を呈しておきたい。 多くのデメリットを抱えていた「弱者」テレ東は、株価や純利の好調によって〝図に乗って〟いないだろうか。 開局が他局に比べて10年あまりも遅れたテレ東。「東京キー局」と言われながら「ローカル局」ほどの規模しかなく、「ヒト」も「カネ」も「モノ」もなかった「ベンチャー」的な存在だったテレ東。だからこそ、どんなことにも思い切って挑戦して失敗することもできたし、「自由な社風」が大学生からも支持を集めた。 だが、ベンチャー企業が成功したあとに慢心を抱き、元々の持ち味を失い、機能不全に陥ることがあるのも事実である。経済報道に強いテレ東はそれを充分知っているはずだが、その自覚はあるだろうか。 かつて「収益が少ない」「視聴率が少ない(低い)」「人数が少ない」という三つのデメリットを「発想の転換」によってメリットに変えてきたその「チャレンジ精神」や「他社とは違うという自覚」はどうなっているのか……それを、いまこのときだからこそ改めて、自分自身に問いかけてみてほしい。そう願っている。 文:田淵俊彦 桜美林大学芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修教授。’64年兵庫県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、テレビ東京に入社。世界各地の秘境を訪ねるドキュメンタリーを手掛けて、訪れた国は100ヵ国以上。一方、社会派ドキュメンタリーの制作も意欲的に行い、「連合赤軍」「高齢初犯」「ストーカー加害者」などの難題にも挑む。ドラマのプロデュース作品も数多い。’23年3月にテレビ東京を退社。著書に『混沌時代の新・テレビ論』『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える〝テレ東流〟逆転発想の秘密』『発達障害と少年犯罪』『ストーカー加害者 私から、逃げてください』『秘境に学ぶ幸せのかたち』など。日本文藝家協会正会員、日本映像学会正会員、芸術科学会正会員、日本フードサービス学会正会員。映像を通じてさまざまな情報発信をする、株式会社35プロデュースを設立した。 https://35produce.com/
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