弱者のはずだった「テレビ東京」が…元テレ東プロデューサーが絶好調の古巣にあえて苦言を呈する訳
しかし、「社員数が、ライバルに比べて少ない」ということにはデメリットと同時にメリットでもあった。社内で「チャンスを与えられる場面」が多くなるということだ。スポーツに例えてみるとわかりやすい。サッカーは11人でプレーする競技だが、部員が50人いるチームでレギュラーになるのと、13人のなかからレギュラーになるのとでは、どちらが大変だろうか。それと同じだ。 仕事でもスポーツでも、「練習」ではなく「本番」でしか身につかないことは山のようにある。本当に自分を鍛えることができるのは、「現場」だけなのだ。頭で考えているだけではなく、現場で体験し、失敗し、学ぶ機会が増えるというのは素晴らしい。必ず力を伸ばすことができる。 テレ東は常に人員が足りない状態であるから、人の動きを固定化してしまうと回らなくなる。逆に、いつも誰かが動いていると「誰か、これやってくれないか?」という話も多く生まれてくる。 いろいろなことができるゼネラリストになって、必ずしも得意でない分野にも顔を出してチャレンジする機会が増えれば、やがて責任を与えられるようになり、できる仕事も多くなってくるというわけだ。やる気のある人、自分を磨きたいと思っている人、挑戦させてほしいと思っている人には、最適な環境だと言えるだろう。チャレンジャー、大歓迎だ。 ◆現場で鍛えられていくテレ東の社員 実際にテレ東では、他局に比べてかなり早くプロデューサーになる。「促成栽培」「即戦力」でないと、放送業務が回っていかないというのも事実だ。 じっくり丁寧に育つのを待っている時間がないので、どんどん実戦投入して、現場で鍛えていくというケースが多くなる。そうするともちろん失敗もあるが、人材は必ず育つ。現制作局長の伊藤隆行氏はいつも言っている。「どんどん、失敗した方がいい」。的を射た考え方だ。 テレ東には、企画を出すうえでの年功序列はない。 基本的に「企画者」はプロデューサーになれるので、企画さえ通れば誰でもそれまでの実績を問われることなく、いきなり番組の責任者になることができる。年功序列が関係ないどころか、なんとなく上が下に命令しにくいムードもある。そのためか、「昔はな……」と職人風をふかせる年長者は、私の経験上、他局に比べてずっと少ない。 社員数が少ないということがあって、テレ東の組織は他局と比較するとずっと風通しがいい。社内の雰囲気はとてもアットホームで、それぞれが顔見知りという感覚だ。部署が違っていてもあまり壁を感じずに、気軽に相談ができる雰囲気がある。 現在、テレビ東京がある六本木の本社は、ワンフロアがぶち抜きの大部屋である。これは、一時期フジテレビが「民放の雄」と言われて勢いがあったころの曙橋社屋の「大部屋制度」に似ている。 例えば、制作局が入っている13階には、制作局以外に編成、営業、宣伝、配信ビジネスなどのセクションが同居していて、自由に行き来できる。何か思いついたら、すぐに相手のところに〝気軽に〟ひょいと行って相談することもできるのである。そんな社屋の構造も、コミュニケーションのよさにつながっているに違いない。