巨人対DeNA 7回裏巨人1死一、三塁、岸田のスクイズで生還する坂本（左）。捕手戸柱（撮影・たえ見朱実）

＜セ・CSファイナルステージ：巨人4－1DeNA＞◇第4戦◇19日◇東京ドーム 　CSに入り、勢いに乗って5連勝してきたDeNA。こう言ってはなんだが、好守を連発し、機動力も駆使し、打線も勝負強さを見せてきた。このまま6連勝で日本シリーズ進出を決める可能性が高いのでは？　と思っていた。しかし同点で迎えた7回裏、ささいな不注意が積み重なって、敗戦が決定的になるイニングを作ってしまった。 【動画】DeNAオースティンに痛恨ミス、巨人長野久義の内野ゴロが失策誘い追加点 　最初のミスは、1死からの坂本の打席だった。ストレートがファウルで、ど真ん中のスライダーを見逃して2ストライク。アッという間に追い込んだが、いずれも甘い球だった。ここから次に投げたチェンジアップも甘く浮いて、レフト前ヒットを打たれたのだが、疲れもあり、注意力が散漫になったための失投に思えた。不吉な前兆の始まりだった。 　次打者の中山への初球も、チェンジアップが浮いて甘く入っていた。見逃して助かったが、中山は伸び上がるようにして見逃していたため、真っすぐ狙いだったのはみえみえだった。しかしジャクソンと戸柱のバッテリーは真っすぐを選択。真ん中とはいえ、低めの真っすぐをライト前にはじき返されてしまった。 　不注意な連打でピンチを迎え、浮足立ってしまったのだろう。8番の岸田がそのまま打席に入った時点で、セーフティースクイズを警戒しなければいけない。しかし、あれだけけん制の大好きなジャクソンが1球もけん制せず、一番バントのしやすい外角への真っすぐを投げ、初球でセーフティースクイズを決められてしまった。けん制で走者と打者の様子を見る。バントしにくい内角高めの真っすぐか、低めの変化球を投げる。基本的なケアを怠っていた。 　1死一、二塁でアンダースローの中川颯がリリーフしてからも、この流れは同じだった。アンダースローは頭をかがめて投げるためスタートは切りやすい。特に三盗はフライング気味のスタートが必要なため注意が必要だが、なんの警戒もせずに初球にダブルスチールを決められた。この後、代打・長野の一ゴロをオースティンが本塁へ悪送球。タイミング的にも微妙で、三塁走者は俊足の増田大だった。1アウトを確実に取るケースだが、一挙に2点を失った。 　短期決戦は「勢い」が大事。ただし、このイニングのように小さな注意の積み重ねを怠ると、勢いは止まってしまう。日本シリーズで戦うソフトバンクは強敵で、力の劣るチームはこのようなプレーを続けてしまったら、勝負にならない。重圧はかかるが、もうひと踏ん張り集中力を高めて戦ってほしい。意地を見せた巨人も、第5戦に勝てば五分。セ・リーグの代表をかけた素晴らしい試合を期待している。（日刊スポーツ評論家）