住みたい街1位に「覚王山」-名古屋の“異界”が浮上
名古屋市民を対象にした「住みたい街」のアンケートで、初めて「覚王山(かくおうざん)」エリアが1位に選ばれた。全国的にはあまり知られていないが、地元では古い街並みに有名ケーキ店や雑貨店が入り交じるおしゃれなエリアとして人気上昇中。その歴史、文化的背景をたどると、これがなかなか異色なのだ。
アンケートは広告会社の「DGコミュニケーションズ」名古屋支店が4年前から毎年、実施している。名古屋市内在住の20歳以上の男女約1000人を対象に、インターネットを通じて「住みたい街」とその理由などを調査。過去3回は、三越百貨店を中心とした高級住宅街で知られる「星ヶ丘」が首位を固め、隣接する文教地区「本山・東山公園」エリアなどが続いていた。
「覚王山」は2011年の初回調査から2連続2位、昨年は3位にとどまっていたが、4日発表された今年の調査では星ヶ丘を0.5ポイント差で抑え、ついにトップに躍り出た。 その理由は「街がおしゃれで、魅力ある店が多い(30代女性)」「古いものと新しいものが同居している(20代男性)」「歴史的な寺社仏閣がありつつもおしゃれな店があり、楽しめる(50代女性)」など、新旧入り交じる街として幅広い世代から支持されていることが分かる。 ■「釈迦の骨」のある寺、松坂屋創業者の別荘… 実際の街もその通りだ。市営地下鉄東山線で名古屋駅から約15分。「覚王山」駅を降りると、老若男女がそろって北に向い、ゆるやかな坂道を上る。400メートルほど先の「覚王山日泰寺(にったいじ)」に続く参道だ。 1904(明治37)年に建立された日泰寺は日本で唯一「釈迦の骨」が安置されている寺。どの宗派にも属さず、「日本の全仏教徒のため」に建てられた。参拝客は全国からひっきりなしで、寺の名前にもなっているタイをはじめ海外からの客も目立つ。 覚王山はこの日泰寺を中心に、参道沿いの商店街が発展、多くの人が住み着くようになった。中でもユニークなのが、百貨店「松坂屋」の初代社長である伊藤次郎左衛門(じろうざえもん)祐民(すけたみ)だ。