【ライブレポート】「原因は自分にある。」は新たな高みへ。彼らが描く『架空のアウトライン』は進化の予兆
最低限のMCに滲む自信
定番の人気曲で盛り上がった熱を秘めたまま、突如、ステージは暗転。メインモニターに浮かび上がったインタールード映像に呼応するように、ステージ右側のスポットライトが点灯し、登場したのは吉澤だ。 意味深に置かれたデスクが見え、ザアッと一陣の風の音がして、便箋が頼りなく飛んでいく。吉澤はその一枚の紙片を追うように、長い両手足を存分に使ったバレエダンスを艶やかに披露。その背景には「運命以上のあなたと、また会う日まで」の文字が。 メインモニターに浮かんでは消えていく歌詞が儚げな『ダイヤモンドリリー』。幻想的なスモークが漂うなか、ほかのメンバーも一人ずつ姿をあらわす。伸びやかに染みわたる小泉の声。MVを彷彿とさせるリリックムービーを背に、それぞれのメンバーがしっとりと歌い上げるバラード。ペンライトの光の波が、静かに揺蕩う。 もしも、君がいなくなってしまったら……。本ホールツアー『仮定法のあなたへ』のコンセプトを裏切らないラインナップに、観測者の心はとらわれたままだ。 ここから『キミヲナクシテ』『貴方に溺れて、僕は潤んで。』『美しい人』『In the Nude』と、序盤のアップテンポなシーンから一転、じっくりと聴かせるセットリストに否応なく引き込まれていく。少しずつ立ち位置を変えながらクルクルと歌い踊る彼らは、視線を一ヶ所に留めておくことを許さない。全体を通してMCの少ないライブ構成にも、彼らの自信が滲む。 明滅する光が、鼓動にリンクする地響きのようなスネアが、観測者の視覚と聴覚をジャックする。ステージ真上から降ろされたストリングカーテンが予感になびいて揺れ、赤く妖艶な世界で武藤と長野が高らかに歌い上げた『貴方に溺れて、僕は潤んで。』は、そのまま『美しい人』へ。 ストリングカーテンの裏に用意されていたのは、一人ひとりのメンバーに設えられたヴィンテージ風チェア。ライトアップされ、キラリと銀色に輝くチェアに座った状態で繰り広げられる妖艶なパフォーマンスに、いとも簡単に目が奪われる。曲調に合わせ、暗転したかと思えば白や紫に染め上げられる舞台。独特な指を鳴らす振り付けも相まって、これまでにない大人なムードを漂わせるげんじぶの姿に、歓声とはまた趣のちがうため息が混じる。 流れるように『In the Nude』へ、途端にステージ上は架空のダンスホールに変貌。首筋を撫でる大倉に場が沸き、一瞬のスポットライトが小泉を強く照らしあげる。ダンサブルなナンバーは怒涛の勢いで観測者を飽きさせない。成熟に近づいた彼らのセクシーさを目の当たりにしたと思いきや、『推論的に宇宙人』から『チョコループ』へとポップな世界観に導かれる。 サビの「宇宙中中中(宙!)」のコールや通称「ニナニナダンス」など、この日初めて『推論的に宇宙人』の生パフォーマンスを体感する観測者も多かったはずだが、そうとは思えないほど呼吸が合っている。吉澤が長野と肩を組んだかと思えば、次は杢代が吉澤に絡みに行き……と、いくら目があっても足りない。 序盤の『GOD釈迦にHIP-HOP』で前代未聞のゼロ距離を果たした彼らだが、まだまだ油断はさせない。左右に伸びた花道に繰り出した彼らは、一階席も二階席も分け隔てなくファンサービスを送る。 客席の奥まで覗き込む武藤、桜木の頬に顔を寄せる杢代、じわじわと小泉に身を寄せる長野。互いに目配せし合いながら、全力の笑顔でパフォーマンスするげんじぶたち。メンバー、そして観測者の一体感あるサビのダンスが会場を満たす。最後はメンバー全員でつくったハートマークで、観測者全員への愛を表現した。