「男性芸人が被害者」Netflixストーカー実話ドラマ 海外で高評価「私のトナカイちゃん」
旧ジャニーズ事務所の創業者による性加害騒動以降、男性の性被害も語られることが少しは増えたものの、ドラマの中で力関係から生じる男性の性暴力被害の問題と真摯に向き合って表現されることはまだ珍しく、これがこの作品が評価される理由の1つになっています。 その一方で、ストーカーとレイプの被害者の同情を誘うだけの物語にしていないことも高評価に繋がっていると思います。ドニーは「自分を嫌うこと、憎むことを何よりも愛していた」と語って自身を見つめることで自分から解放される一歩を踏み出します。周囲からの評価を恐れながら、名声を求め、承認欲求が止まらない1人の人間の正直な訴えが響いてくるからこそ、支持を集めているのです。
Netflixオリジナル作品の中では大作の部類に入らずとも、7週連続でグローバルランキングに入り、これまで90以上の国と地域でNetflix公式「TOP10(英語TV部門)」入りを果たしたことに納得もできます。ただし、欧米をはじめ、中東、アフリカ、アジアといった幅広い地域で支持を集めるなかで、Netflix海外作品のあるあるですが、日本ではまだ「TOP10」ランキング入りしていません。ストーカーの話から普遍的な問いかけに行き着く力作を見逃すのは勿体ないように感じます。
長谷川 朋子 :コラムニスト