消費低迷でウズラ1万羽を殺処分した生産者の苦悩…福岡県での小学生死亡事故を受け 苦境の中で差し込んだ一筋の光【静岡発】
2024年2月、給食中に小学生が喉に詰まらせ死亡する事故があってから消費が低迷したウズラの卵。静岡県内の生産農家は加工メーカーから減産を要請され1万匹を殺処分したという。ただ、ここに来て明るい兆しも見え始めている。 【画像】給食中の死亡事故でウズラの卵がピンチ…生産者の苦悩
こだわりの飼育で濃厚な味わい
静岡県湖西市にある浜名湖ファーム。 創業40年で、親子三代にわたってウズラを育てている。現在は約8万羽のウズラを飼育し、1日6万個の卵を生産しているそうだ。 この日、近藤尚 専務(29)はウズラにお茶を飲ませていた。お茶を飲ませることでウズラ自体が元気になり、暑い夏に負けないような体力づくりができるという。 浜名湖ファームの飼育の特徴はワクチンや殺菌剤を使用していないことだ。海外から輸入した独自の餌を与え、丈夫なウズラに育つよう工夫を凝らしている。 浜名湖ファーム・近藤尚 専務: 乳酸菌や酵母菌といった発酵菌をウズラに食べさせることで腸内環境を良くしてウズラの免疫力を強くし、病気にかからないような元気なウズラづくりをしている こうしたこだわりによって作られた卵には濃厚な味わいに加え豊富な栄養素が含まれていて、全国でも評判を呼んでいる。
給食の死亡事故で消費が低迷
しかし2024年2月、福岡県の小学校でウズラの卵を喉に詰まらせた1年生の男子児童が死亡した。 これにより多くの自治体が給食でのウズラの卵の使用を見合わせたほか、家庭での消費も落ち込んだ。 浜名湖ファームでは生産量全体の8割を加工メーカーに出荷していたが、メーカーから「事故の影響で需要が減り在庫量が増えたので2割減産するように」と要請があったそうだ。 さらに円安に伴う飼料の高騰も相まって、浜名湖ファームでは泣く泣く約1万羽の殺処分を余儀なくされた。
目標を大きく超える支援金
心を痛めた近藤専務は「これ以上の殺処分は避けなければならない」とクラウドファンディングに望みを託すことを決意した。 目標金額は300万円。 決して簡単な金額ではないが、消費の拡大にもつながればと自慢のウズラの卵を返礼品としたところ、わずか1カ月で目標を大きく超える474万円あまりの支援が集まった。 浜名湖ファーム・近藤尚 専務: 想定以上です、これほど集まるとは思っていなかった。「昔から(浜名湖ファームの)ウズラの卵を食べていて、これからもずっと食べたいので応援します」というメッセージや「大変な時期ですが頑張ってください」というメッセージをもらった