元ホンダ技術者・浅木泰昭氏が2024年のF1を大総括!「25年、ホンダはレッドブルと最後までちゃんとやる。いい加減な仕事をする後輩たちではありません」【後編】
■優勝請負人、ニューウェイ移籍の影響は? ――中団グループに目を移すと、2026年からホンダとパートナーを組むアストンマーティンはどう見ますか? 24年シーズンはやや精彩を欠きましたが、天才デザイナーのエイドリアン・ニューウェイがレッドブルから移籍し、25年の3月からマネージングテクニカルパートナーとして活動を開始します。 浅木 ニューウェイさんが手がけたマシンは、現実的には2026年シーズンに間に合うかどうかだと思います。でも彼がリーダーとして加入することで、開発の方向が定まり、現場のスタッフたちは落ち着いて仕事に取り組めるようになると思います。そうなると、25年シーズンにも多少の影響が出てくるかもしれません。 現場のスタッフは、「提案したことの方向性が間違っていないか」「失敗すると自分の責任になったりするんじゃないか」という恐怖心があるものですが、はっきりと方向性を示してくれるリーダーがいると、組織も変わってきます。ニューウェイさんのようなリーダーの存在はチームにとって非常に大事なんです。 ――中団グループではアルピーヌが2024年シーズンの終盤に大きく伸びてきました。浅木さんは各メーカーのPUに関して「ホンダ、メルセデス、フェラーリは横並び」と話されていましたが、アルピーヌ躍進の理由をどう見ていますか? 浅木 PUの開発は凍結されていますし、急にアルピーヌのパワーが出てきたとは考えにくいです。F1を主催する国際自動車連盟(FIA)は全車のトランスミッションの中にあるセンサーを見ることができますし、各メーカーもライバルの動向を分析しているので、レギュレーションの裏をかくような変なことはできません。 それに急にパワーが上がったら、ほかのメーカーからクレームが必ず出ます。それがないということは、変なことは一切していないということだと思います。単純に車体のアップデートが効果を上げているのでしょう。 私がホンダで開発に携わっていた頃の分析結果を見ても、アルピーヌのPUはどうしようもないほどダメということはありませんでしたから。遅れをとっていたのはコンマ1~2秒ぐらいだった。箸にも棒にも引っかからないPUじゃなかったので、車体の性能が良くなったことでパフォーマンスが向上したということだと思います。