大阪桐蔭、健大高崎、報徳学園…優勝候補はなぜ敗れたのか?上位進出校の勝利の秘訣は?見えてきた「高校野球の変化」
総合力は申し分ないものだったが…“淡白さ”が敗戦につながった大阪桐蔭
大会8日目2回戦 小松大谷(石川)3-0大阪桐蔭(大阪) 今年の大阪桐蔭の選手たちを見ると、高校生はいつでも同じパフォーマンスができるわけではないことを改めて痛感した。これほどの選手たちでも淡白なパフォーマンスで終わってしまう時がある。 初戦の興南戦では大会屈指の左腕・田崎 颯士投手(3年)から5得点。今、振り返っても田崎の基礎能力の高さは左腕では今大会でも上位に入る投手だった。 だが、小松大谷の西川 大智投手(3年)を攻略できず、7回に先制点を許し、そのまま完封負けを喫した。西川はいわゆる超高校級の実力を持った投手ではない。135キロ前後の直球、スライダー、カーブ、チェンジアップなど丁寧に投げ分ける技巧派右腕。抜群のコントロールがあるわけではなく、ストレートは適度に荒れて、打ちにくさがある。 この代に限らず、歴代の大阪桐蔭打線がこのタイプの右腕に封じられる姿は見たことがなかったので、驚きであった。境 亮陽外野手(3年)は「ボールが荒れるので、狙い球が絞りづらかった」とこぼす。他の選手たちも「決して打てない投手ではないですが、うまく捉えられませんでした」と悔やんでいた。 西谷浩一監督は「夏はどのチームも強いですし、気迫を持って臨んできます。我々もそのつもりでやってきましたが、それに及ばなかっただけです。高校生なので、できる時とできない時があります」と敗戦を振り返った。 投手陣は強力、課題だった守備もかなり良くなっていた。初戦の興南戦の試合内容は申し分ないもので、波に乗れる勝ち方だった。だからこそ、惜しい敗戦だった。
ベスト8進出のチームは何が違うのか?
これら5校の名門とベスト8進出したチームは何が違うのかといえば、以下の3点が挙げられる。 ・相手に応じた戦略を忠実に実行できる ・パフォーマンスに波がない ・イニングの勝負所が分かっている 今大会、8強までの2試合で自責点0の快投を見せた東海大相模の藤田 琉生投手(3年)は、初戦の富山商戦では相手が直球狙いと把握し、変化球主体の投球で組み立て、7回13奪三振。またどの試合でも140キロ台の直球、鋭い変化球を投げ、コンディション調整もしっかりしており、悪い日がなかった。 京都国際の奥井 颯大捕手(3年)は相手打者はもちろんだが、審判の傾向を掴んで配球していた。 「甲子園の審判さんは広く取ってくれるなと思います。京都の審判さんの中には、狭い人もいるので。横を広く取ってくれたり、高低を取ってくれるのか。それによって考えています」 それが京都国際の投手陣の持ち味を引き出し、4試合で3失点。そのうち3試合は完封勝利という結果につながった。 クーリングタイム後の6回表の先頭打者もポイントのひとつだ。 神村学園は2回戦の中京大中京戦で6回表に先頭打者の正林 輝大外野手(3年)の四球をきっかけに逆転。小田大介監督も「あの四球が大きかった」と語る。 関東一は3回戦6回表の先頭打者・坂本 慎太郎外野手(2年)が四球で出塁。その後、適時打で勝ち越しのホームを踏んだ。坂本は「次を打つ徹平(高橋)さんら良い打者が続くので、何としても出塁するつもりでした」と語る。 そして敗れた明徳義塾・馬淵史郎監督はこの場面を悔やんだ。 「あの四球は痛かった。接戦時のクーリングタイム明けは難しく、どちらかというと先攻めが有利なんですよね」 今年の夏もあと3試合。勝つための戦略、そして試合を分けるターニングポイントでの選手たちの動き、表情、ベンチの動きにも注目をしてほしい。