大阪桐蔭、健大高崎、報徳学園…優勝候補はなぜ敗れたのか?上位進出校の勝利の秘訣は?見えてきた「高校野球の変化」
夏の甲子園もいよいよ準決勝を迎えた。勝ち残った4校、青森山田、関東一、京都国際、神村学園はいずれも優勝経験がない。 【トーナメント表】夏の甲子園 大会12日目までの結果一覧 一方で、甲子園常連校、優勝経験校は苦しんだ。特に前評判も近年の実績も高かった5校、花咲徳栄・報徳学園・健大高崎・智辯和歌山・大阪桐蔭の早々の敗退は、高校野球の質が変わったことを如実に感じさせた。 この5校の敗退パターンを振り返ると、 ・先制点を取られたのが3チーム ・先制点を取ったが、逆転されたのが2チーム 名門5校は、なぜ敗れたのか。
焦って早打ち、チャンスをつぶした結果、流れを持って行かれた花咲徳栄
大会3日目1回戦 新潟産大附(新潟)2-1花咲徳栄(埼玉) 世代屈指のスラッガー・石塚 裕惺内野手(3年)を擁する花咲徳栄は、2回裏に犠飛で1点先制。石塚も好走塁を見せ、花咲徳栄のリズムで乗るかと思われたが、相手の新潟産大附の好守備、そして走塁ミスでチャンスを潰し、2点目が取れない嫌な流れが続く。 そんな中で、じわじわと攻めていた新潟産大附に6回表、7回表にいずれも二死三塁から適時打を打たれて逆転される。花咲徳栄は相手の技巧派右腕を打ち崩せず、頼みの石塚は4打数1安打に終わった。埼玉大会では140キロ超えの右腕、左腕を攻略してきた強力打線だが、凡フライが多くあった。試合後、石塚は「相手の攻めも研究していた通りだったのですが、焦って打てませんでした」と悔やんだ。 花咲徳栄は投手のレベルも高く、新潟産大附の走塁を警戒し、内外野も緊張感を保ってプレーしているのが伝わった。一方で打線は、焦って早打ちになり、持ち味を出せなかった。 ミスでチャンスを潰した花咲徳栄。結果、相手に流れをもって行かれ、甲子園を去った。
初回のストレート勝負がアダに……堅守も乱れ、大社に主導権を握られた報徳学園
大会5日目1回戦 大社(島根)3-1報徳学園(兵庫) センバツ準優勝の報徳学園が初戦敗退。すべては初回で決した。報徳学園はエースの今朝丸 裕喜投手(3年)が先発したが、いきなり2失点。今朝丸が初回に投じた球数は23球のうち、ストレートは17球。その直球を狙い撃ちされて、3安打を打たれた。徳田 拓朗捕手(3年)は「大社打線はストレートだけではなく、スライダー、フォークもくらいついていました。ただストレートばかりになってしまったのは反省です」と語った。また、守備のミスで併殺を取れないなど“堅守の報徳”らしくない場面もあった。 2回以降、スライダー、フォークを交えた配球に切り替えてからは、6回まで8奪三振。先制打を放った大社の5番下条 心之介外野手(3年)は「直球だけならば、速い球を打つ練習をしていたので、打てたのですが、スライダー、フォークも混ぜられると打てないです…」と語っていただけに、初回の配球は悔やまれる。 今年の報徳学園のチームカラーは先制点を挙げて守り勝つチーム。兵庫大会もすべて先制していた。失点を取り返せるような強力打線ではなかった。 後手後手に回ってしまった報徳学園。試合後、大角 健二監督は「夏の甲子園の初回は難しい」と嘆いた。大社とは練習試合も行う間柄。大社の強さも、初回の重要性も理解していた報徳学園だったが、“甲子園の魔物”に飲み込まれたような敗戦だった。