週刊・新聞レビュー(11.04)「朝日の記事だけを『捏造』とする 理解しがたい首相発言」 徳山喜雄
「撃ち方やめ」報道をめぐり、朝日新聞だけを名指しして「捏造」と非難する首相発言が、物議をかもしている。他紙も同じような記事を書いており、朝日だけを問題視するのは、理解しがたい奇妙な話である。 「政治とカネ」の問題で閣僚の不祥事が相次ぐなか、民主党の枝野幸男幹事長の政治資金収支報告書の収入の不記載問題が明らかになった。ここぞと勢いあまり、暴走気味になったのだろうか。 小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相の「ダブル辞任」につづき、問題が取りざたされている主な閣僚や野党幹部は、次のような顔ぶれだ。 自民党では宮沢洋一経産相、江渡聡徳防衛相、望月義夫環境相、有村治子女性活躍担当相、民主党は枝野幸男幹事長、福山哲郎政調会長、近藤洋介元経産副大臣、大畠章宏前幹事長、維新の党からは江田憲司共同代表の名前があがっている。尋常ではない多さだ。 なかでも弁護士出身の枝野氏が、政治資金収支報告書をめぐって追及されることになったのは、民主党にとって大きな誤算だっただろう。この先鞭をつけたのが安倍晋三政権の応援団の読売新聞だった。 同紙は10月29日朝刊の1社面に3段見出しを立て、「枝野氏も収入不記載/政治資金報告 新年会240万円」と特報。さらに30日朝刊では「政治とカネ」の問題が野党にも波及した点を重くとらえ、政治面トップ、1社面トップに記事を据えるとともに社説を掲げる大展開をした。 30日から衆院予算委員会がはじまるという、絶妙のタイミングでの掲載であった。他紙やテレビニュースも追いかけ、枝野氏問題が拡散していった。これで一気に流れを変えたいと、政権側が反転攻勢にでようとしたのは想像に難くない。 安倍首相は予算委で閣僚の不祥事を謝罪する一方で、「殺人や強盗を行った革マル派の活動家が影響力を行使し得る指導的な立場に浸透しているとみられる団体から、枝野議員は献金を受けていた」ときわどい言い回しで牽制するなど、強気にでる場面も目立った。