王者・徳島市立が待つファイナルへ!! タフなゲームに強い徳島商、5発快勝で3年ぶりの選手権出場まであと1勝:徳島
[11.2 選手権徳島県予選準決勝 徳島商高 5-2 徳島科学技術高 徳島市民球技場メイン] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 午後に入って雨脚が強まり、横から吹き付ける風の勢いも衰えない。芝のコンディションは最悪。第1試合を終えたばかりの徳島市立高・河野博幸監督が「うちが2試合目だったらと思えば」と苦笑いを浮かべたように、技術で勝負するサッカーはできない。まるで田んぼのようなグラウンドで、重馬場かつ水溜りがそこかしこにできたピッチでの戦い方が勝負の分水嶺となった。 2日、全国高校サッカー選手権の徳島県予選準決勝が行われ、3年ぶりの出場を目指す徳島商高が徳島科学技術高と対戦。前半から効果的に得点を重ね、5-2の快勝で徳島市立が待つ決勝に駒を進めた。 「多分、うちのほうが天候に左右されないようなサッカーを志向している。そこは分があるなと。早い段階で得点が取れたし、セットプレーからのゴールも含めて良かったと思う」 小西健太監督が振り返った通り、ハードワークで勝負する徳島商は序盤からテクニカルなスタイルに定評がある徳島科学技術を圧倒する。豊富な運動量でセカンドボールを拾うと、泥臭くボールを運んでチャンスを作り出す。前半11分には、今予選2度目の先発となったFW藤澤珀人(1年)が主将・右SB柿平輝大(3年)の右CKに頭で合わせてネットを揺らす。弾みをつけると、20分にも藤澤がFW篠原健太(3年)の左クロスに反応。ディフレクトして山なりになったボールにうまく触り、ヘディングでゴールを奪った。 リードを広げた徳島商は攻撃の手を緩めず、24分に篠原がミドルシュートを突き刺して3点目をもぎ取る。前半だけで3-0。最高の形で前半を終えた。 後半に入ってもペースは落ちず、開始早々の2分に藤澤がシュートのこぼれ球に反応。ストライカーらしく狡猾な動きでゴールを陥れ、準決勝でハットトリックを達成した。 6分には途中出場のMF元木然(3年)が加点。左サイドからクロスを入れると、ボールは相手GK坂東聖留(2年)の頭上を越えてファーサイドへ。そのままネットに吸い込まれ、勝負を決定づける5点目が生まれた。 以降は運動量が落ち、攻守の切り替えスピードが低下。オープンな展開になり、14分に徳島科学技術の主将・FW鈴江京太郎(3年)に鮮やかなコントロールショットを沈められた。その後も相手に押し込まれる時間帯が続き、32分にも左クロスから鈴江に頭で決められてしまう。 後半の半ば以降は苦しい時間帯が続いたものの、リードを守り切った徳島商が歓喜の瞬間を迎えた。 1年前、徳島商は同じ会場で行われた準決勝で悔し涙を呑んだ。徳島市立に対し、後半の半ばに先制しながらも1-2の逆転負け。あと一歩のところで届かず、全国舞台に挑む権利を手に入れられなかった。今季は昨年のエース・冨士村優(現・三菱水島FC)のような一人で打開できるタレントはいないが、組織力は今季のチームが上。泥臭く戦う逞しさがあり、指揮官も今年のチームをこう評する。 「去年は大エースがいて、とりあえず渡しておけば、そこから突破ができた。でも、今年はできない。なので、複数の選択肢を持って、篠原と藤澤プラス両ワイドの選手で崩す。いろんなバリエーションをつけながら勝負する。守備でも全員が一つのボールに対してコンパクトに守って、奪い切ることを徹底してきた」 そうしたチームで戦う姿勢が泥臭さやハードワークにも繋がっており、簡単に崩れないチームに仕上がってきた。次なる相手は宿敵・徳島市立。昨季の借りを返すには最高の舞台となる。 「今年の組み合わせでは決勝までいかないと戦えない。今年だけではないけど、うちにくる選手は徳島市立を倒したいと思って入ってくる子たちが多い」(小西監督)。 昨年の雪辱を晴らせるか――。選手権出場40回を誇る古豪がチャレンジャー精神で王者に挑む。 (取材・文 松尾祐希)