学校は窮屈すぎる…適応できない自分に苦しむ発達障害の息子。「どんな子にも居場所と学びを」。不登校の受け皿へ注目される「多様化学校」
発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの⑨より) 【シリーズ「特別支援教育の今」を初回から読む】まさか自分の子が…かつて無理解だった特別支援学級は今、急速に増える。上限8人の小所帯。「ここが、この子の居場所」
伊佐市の男性(18)は小学6年生から、学校を休みがちになった。じっと座っていることが苦手になり、授業に集中できなくなった。勉強についていくのにも苦労し、級友とも疎遠になる悪循環に。自閉症スペクトラム障害と知らされたのは高校入学後だった。 学校に事情は相談したが特別な支援はなく、月10日ほど休む生活。「授業中でも友人の席に行って質問できていれば、もう少し登校できたかも」と振り返る。 「学校は規律が徹底され、窮屈すぎる」。鹿児島市で高校1年から小学2年まで3人の息子を育てる母親(43)は、発達障害のある長男、次男が不登校を経験した。 「2人とも、通いたいと思っているのに適応できない自分が嫌で苦しんでいた。もう少し緩やかな環境にしてほしい」と訴える。療育手帳を持つ三男も最近、学校に行くのを渋るようになったという。 ◇ 文部科学省が10月31日に発表した調査結果では、不登校の小中学生が2023年度に初めて30万人を超えた。11年連続で前年を上回り、新型コロナウイルス禍だった20年度以降は約15万人増加。鹿児島県内の公立でも4570人に上る。
文科省は今回の調査で、障害に関する項目を新たに設定した。学校に「障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった」は、小学生8.8%、中学生5.9%。県内では小学生8.8%、中学生6.6%だった。 発達障害への対応が、不登校の一因となっている可能性を指摘する声は少なくない。文科省も増加要因の一つとして、特別な配慮が必要な子への指導、支援に課題があったと分析する。 ◇ 不登校の児童生徒の受け皿として注目されるのが「学びの多様化学校」だ。起立性調節障害の子に配慮した登校時間、個別学習や習熟度に合わせた授業などが特徴だ。5月現在、全国に35校が開設されている。 県内に公立の多様化学校はまだないが、志布志市教育委員会は10月、将来の設置を視野に、有識者らによる学びの多様化基本構想策定検討委員会を発足させた。25年度中に方向性をまとめる。 市教委は現在、不登校の児童生徒を支援する「学びの多様化教室」を開設し、専門相談員らによる学習指導や体験活動を行っている。通所者の増加を受け、教員を配置できる多様化学校も含めた議論を始めた。
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