妊娠8カ月で告げられた、おなかの子は18トリソミー。『なんで私が…』それでも親としてわが子と向き合い、出した答え【体験談】
せっかく来てくれた命だから、私たちができることはすべてやってあげたい!
「自分なりにたくさん考えて、覚悟はしていたものの…。『おなかの赤ちゃんは18トリソミーという染色体異常です。18トリソミーの子は、おなかの中で亡くなってしまうケースが多く、生命予後(寿命)も長くありません』と先生から告知を受けたときは、やはりショックを受けました」(中須賀さん) しかも、「無事に産む」ことがクリアできたあとも、親として、さまざまなリスクに備えた選択が求められます。たとえば、「呼吸が苦しくなったときは、呼吸のサポートを行うか?」「トラブルが起きたときには、積極的な延命処置を希望するか?」「生後にバンディング手術を行うか?」など、親が選択をして、そのつど方針を決めていくのです。先生から「苦しい思いをさせたくないからと、延命処置は何もしないと選択するご家族もいる」と聞き、最初は中須賀さん自身も、「どうするべきか?」と迷い、葛藤しました。 「『延命処置をしたら苦しいかもしれないし、この子の寿命に任せるほうがいいのだろうか』と考える私もいました。正解がない選択だからこそ、自分の中のきれいごとで言い聞かせようとしていたのかもしれません。でも、夫が『せっかく来てくれた命だから、親としてできることはすべてやってあげたいよね』って言ってくれて。彼の言葉にモヤモヤしていた気持ちが晴れて、「私もそっちの考え方だ!この子のために、できることは何でもしよう!」と決意しました。人によって、違う選択もあるかもしれません。だけど、どんな選択をしたとしても、親は悩み、苦しみ、前向きに出した答えなのだと実感しました」(中須賀さん) そして、38週に予定帝王切開で無事に出産した中須賀さん。望ちゃんは、か細いながら産声(うぶごえ)を上げて誕生し、「生後直後、自分で呼吸できるかどうか?」という関門をクリアすることができました。
生後16日目に手術を無事に終えて、退院までカウントダウン
「望は出生直後すぐにNICUに向かいましたが、スタッフが『生まれましたよ』って、ほんの一瞬でしたけど顔を見せてくれて、うれしさといとしい気持ちがあふれてきました。翌日、NICUに会いに行き、初めて抱っこさせてもらったときも、「1780gだから、やっぱり小さいなあ。でも、かわいいなあ」って。と同時に、『もしかしたら、この子は短命かもしれない。こんなにかわいいのに、もう離れなきゃいけない可能性があるんだ』と、切ない気持ちでいっぱいになりました」(中須賀さん) 「わが子をいとしく思う気持ちと、恐怖と不安が常に背中合わせだった」という心境のなか、「今の私にできるのは、わが子に母乳を届けてあげること」と、中須賀さんは産後直後から、さく乳器で絞った母乳をNICUに届ける日々を送ります。望ちゃんは、ママの母乳を経管栄養のチューブで口から注入してもらい、少しずつコンディションが安定していきます。 コロナ禍で厳しい面会制限があったため、ママがひと足先に退院してからは直接会えない日が続きましたが、スタッフが写真とともに記録してくれる「成長日記」が何よりの励みに。そして望ちゃんは、生後16日目に、心室中隔欠損症の症状を軽減するための手術(心臓から肺に向かって血液が大量に流れ込まないように、肺動脈を縛る手術)を受けることができました。 「18トリソミーで生まれた子の場合、心室中隔欠損症がセットでついてくることが多いんです。左右の心室を隔てる壁に孔が開いていると、血流がすごく早くなってしまうので、肺に行く血管を縛るバンディング手術を受けました。たまたま、転院先の病院に18トリソミーの子の手術経験が豊富な先生がいらして、私たちは本当に恵まれていたと思います。そして、生後40日ほどが経過したころ、ようやく退院許可がおりました。『一緒におうちに帰りたい』というのが、私の次の目標だったので、本当にうれしかったです」(中須賀さん) ※心室中間欠損症では、心臓の右室と左室を隔てる壁に穴があることで、心臓から送り出される血液がどんどん肺のほうに送られ、全身に送る血流量が少なくなってしまいます。心臓や肺への負担を軽減するために、血流を調整する手術がバンディング手術です。