樋口恵子×和田秀樹 65歳以上5人に1人が認知症と言われるのに「なったら人生おしまい」?高齢者の「迷惑をかけてはいけない」はマイナスにも働く
◆依存力 樋口 人にお願いする力ですね。私は「依存力」と言っていますが、すごく大切なことだと思います。本当は助けてほしいんだけれど、自分からその状況を説明せず、何となく雰囲気で察してほしいという人がいます。 勘のいい人が近くにいたら手を貸してくれるでしょうけれど、ほとんどの場合は手を貸してくれません。当たり前ですね、助けてほしいと伝えていないのですから。その結果、勝手に「誰も助けてくれない」と落ち込んだりします。 依存力というのは、ただ人に甘えるというのではなく、きちんと自分の状況を人に伝えて、なおかつ自分と他者との関係のなかで失礼にならないように、どうしてほしいか的確に伝える能力も含まれるんじゃないかしら。その結果、相手が手を貸してくれたら、「ありがとう」とお礼を言うし、ダメな場合でも理由を聞いて、あとくされなく引きます。 お金で解決できることなら、それもひとつの解決方法です。誰か助けてくれるのを期待して待っているのではなく、自分からオープンにかかわっていくという姿勢が大切なのだと思っています。 と、そんなことを言いながら、一方で介護される身になることに、強い抵抗があるのも私です。一時デイサービスを利用していたとき、理学療法士から「ヒグチさん、介護されるのは嫌ですか」と聞かれました。 「嫌かもしれません。介護されるほうは『好きで介護される身になったんじゃない』と、いつも悲しい思いをしていると思いますから」と答えました。 われながら、かわいげのない答えでした。でも、いつかは介護される身になることはたしか。これから、ケアされる身になったとき、しっかりと「ありがとう、お世話かけました」と言えるように、依存力を高め「ケアされ上手」にならなければと思っています。 ※本稿は、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(講談社)の一部を再編集したものです。
樋口恵子,和田秀樹
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