中国の迂回輸出許さぬ「トランプ2・0」大統領再選に備え〝高関税回避〟準備も 合成麻薬の密輸封じ口実に第1弾を放つか
【田村秀男 お金は知っている】 トランプ次期米大統領が来年1月20日の政権発足後、中国からの輸入品に10%、メキシコとカナダに同25%の追加関税を課す。中国からの直接輸出にとどまらず対米迂回(うかい)輸出ルートを塞ぐ決意だ。 中国企業はトランプ第1次政権時代の2018年勃発の米中貿易戦争以来、高関税を免れるために第3国経由での対米輸出を増やしてきた。大統領選の今年に入ると、トランプ再選に備えて高関税回避の準備を用意周到に進めてきた。海外市場向けの電子商取引(EC)サイト「Temu(テム)」を傘下に持つ格安のネット通販大手PDD(本社上海)の場合、今年6月の時点で中国から対米輸出の6割をメキシコ、ベトナムなどからの輸出に切り替える態勢を整えたという。こうした中国側の迂回作戦をトランプ次期政権移行チームは見抜き、まずは合成麻薬「フェンタニル」の密輸封じを口実に高関税第1弾を放つ。 グラフは米国統計から見た18年以降の米国の中国、メキシコからの輸入の推移である。中国からの輸入は急減した後、回復したが再び落ち込んでいる。対照的にメキシコからの輸入は21年以降急増の一途である。トランプ第1次政権時代の20年7月に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)はそれまでの北米自由貿易協定(NAFTA)に代わり、互いに関税を撤廃するので、メキシコやカナダからの対米輸出が勢いづいた。もちろん、USMCAに便乗するのは中国企業ばかりではない。メキシコの生産拠点を強化している日本の自動車メーカー大手などが今回の追加関税25%によって受けるとばっちりは少なくない。 だが、「MAGA(米国を再び偉大な国にする)」を掲げるトランプ氏にとってみれば、米国覇権を脅かす中国を押さえ付けることが最優先事項なのだろう。中国は第1次トランプ政権の制裁関税をものともせずに、輸出を大きく伸ばした。今年9月までの1年間の米国の輸入は18年に比べ、中国からが1050億ドル減った半面、中国を除く世界からが7600億ドル余り増えている。第3国経由の中国の対米迂回輸出がこのうちどれだけ占めるかは不明だが、上記期間中の中国の米国以外の国・地域への輸出増は9600億ドルに上る。今度こそは、その二の舞いを許さないというのが、トランプ第2次政権(トランプ2・0)なのである。 (産経新聞特別記者 田村秀男)