「どんな障害者でも、とにかく受け入れてしまう」グループホーム大手運営会社 事業拡大を優先、報酬高い重度者に狙い…現場で起きていたことは
ほかの複数の看護師も「人員が少ないため、目が行き届かず転倒した人がいた」「本来とは違う薬を飲ませてしまう誤薬がよくあった」などと話す。 厚労省は日中型GHの質を担保するため、福祉関係者や有識者らでつくる各市町村の協議会がオープン前やその後も定期的にGHを評価する仕組みを設けている。 愛知県内の協議会では、恵のGHに相次いで厳しい評価が示されているが、ある協議会の委員は「いくら注文を付けても強制力はなく、事業所指定の要件を満たせば開設できてしまうので意味がない」とこぼす。 ▽入居後、行動障害が激しく 「不適切なケアで息子は行動障害がひどくなり、薬漬けにされて命の危険を感じた」。そう訴えるのは、愛知県に住む間宮絵理さん(50)=仮名=夫婦だ。 間宮さんには、自閉症で重い知的障害がある双子の息子がいる。2人は2019年、同県春日井市のGH「ふわふわ春日井」に入居。当初は自分や他人を傷つける行動はほとんどなかったが、長男は21年夏から部屋の壁紙をはがし続けたり、間宮さんにつかみかかったりするようになった。
息子たち入居者は日中、GH隣にある恵の通所施設を利用。元社員らによると、この通所施設では「お仕置き部屋」と呼ぶスペースがあり、当時の所長がそこで利用者に暴行をしたり暴言を吐いたりすることが頻繁にあったという。 自閉症の人はストレスがたまると、行動障害が激しくなる傾向があるが、GH側は「原因は分からない」としていた。間宮さんは「そういうことが行われていたとは知らされなかった。息子はつらい思いをしても分かってもらえず、悲しく、苦しかっただろう」と憤る。 ▽「こんな被害はもう最後にして」 GH側は長男を落ち着かせようと、抗精神病薬の服薬を増やしていった。相談がないまま、他の薬を含め10種類近くに増加。行動障害を理由に4カ月間、面会を見合わせ、久しぶりに会うと、長男はうつろな表情になっていた。間宮さんは自宅へ戻すことを再三申し出たが、止められたという。 この頃には、風呂や洗面所で水を大量に飲む行動も現れるように。水の飲み過ぎによる低ナトリウム血症でけいれん発作を起こして倒れ、2回救急搬送された。「命が危うい」。間宮さん夫婦はそう感じ、退去させた。
驚くことはまだあった。長男が壁紙をはがすなどして壊した部屋の修繕費の請求書が届き、金額を見ると約160万円。自分たちで見積もりを取り、恵と交渉した結果、約58万円になったが、3倍近い金額を請求されたことになる。 次男も今は退去し、長男は別の事業者が運営する県外のGHで暮らす。間宮さんは「人と自分を傷つけることだけはしないようにと、一生懸命育ててきたのに…。こんな被害はもう最後にしてほしい」。そう涙をにじませた。 間宮さんの長男のケースについて、恵本社は取材に対し「利用者の個人情報に関わるため、お答えできない。調査すべきことはしっかり調査している」と回答した。