「どんな障害者でも、とにかく受け入れてしまう」グループホーム大手運営会社 事業拡大を優先、報酬高い重度者に狙い…現場で起きていたことは
国の制度改正の波にうまく乗ったという面もある。 恵が運営するGHは多くが「日中サービス支援型」(日中型)と呼ばれるタイプ。これは、障害者の重度・高齢化に対応しようと、2018年度に厚生労働省が新たに制度化した類型のGHだ。 通常のGHでは入居者は日中、通所施設や就労先に通うが、日中型では昼間もGHにいて支援を受けることができる。 日中型は20年4月時点では全国に182カ所だったが、今年5月では840カ所と4.6倍に増えた。うち1割ほどを恵が運営している計算となる。 障害が重い人はその分、支援が難しく、受け入れる事業者は少ない。受け皿が少なかったニーズに応えた形となり、元社員によると、役員は定員がすぐ埋まる状況を「入れ食いだ」と表現していたという。 ▽対応追い付かず、虐待も だがその結果、現場では重い身体障害のある人、自閉症で強い行動障害がある人、うつ病の人など異なる種別の障害者が混在。支援が難しい人も多かったが、「次々と施設を増やしていった結果、経験や知識のないスタッフを雇わざるを得ず、とても対応が追い付いていなかった」(元社員)。
恵のGHがあったり利用者がいたりする自治体に取材すると、虐待疑いの通報が相次いでいたことも分かった。「GHのスタッフから暴言を受けたという通報があり、改善を指導した」(愛知県安城市)、「入居者の保護者から『不衛生でトコジラミが発生した』と通報があった」(愛知県東郷町)。他にも複数の自治体が虐待に関する相談や通報を受けていた。 そのうち千葉県野田市は、GHスタッフが入居者に対し暴言を吐くよう別の入居者をそそのかしていたして、心理的虐待と認定。愛知県岡崎市も虐待を認定したケースがあることが分かった。 ▽障害者に輪ゴム飛ばす このほか、元社員ら関係者からは「GHのスタッフが入居者に輪ゴムを飛ばしてぶつけていた」「行動障害がある入居者を椅子で壁に押しつけていた」「外側から鍵を掛けた部屋に閉じ込めていた」といった証言が出ている。 事故も相次いでいたという。疾患がある高齢の障害者ら向け有料老人ホーム(名古屋市)に勤めていた看護師はこう証言する。「宿直のスタッフが2時間に1回巡視することになっていたのに、寝てしまって8時間巡視しなかった。その間にたんが詰まって窒息してしまったのか、亡くなった人がいた」