「どんな障害者でも、とにかく受け入れてしまう」グループホーム大手運営会社 事業拡大を優先、報酬高い重度者に狙い…現場で起きていたことは
障害者向けグループホーム(GH)大手運営会社「恵(めぐみ)」で、食材費の過大徴収や報酬の不正受給の疑いが明らかになった。名古屋市で事業を始めた同社は、ここ5年ほどで東北から九州まで各地に進出、大幅に施設数を増やした。なぜそんな急成長が可能だったのか。一方、元社員たちによると、事業の拡大を優先した結果、経験や知識のないスタッフが増加。対応の難しい障害者の支援に手が回らず、不適切なケアや虐待、事故が起きる悪循環に陥ったという。現場で何が起きていたのか。(共同通信=市川亨、岩原奈穂) ▽次々と事業展開、5年で120カ所に 恵が最初のGHを名古屋市で始めたのは2018年のこと。「ふわふわ」という名称で愛知県を中心に次々と数を増やし、わずか5年ほどの間に12都県で約120カ所を運営するまでに急成長した。 GHだけでなく、通所施設や訪問看護ステーションなども展開。主な利用者は知的、精神障害がある人たちだ。
知的、精神障害の人たちは成人後も親と同居しているケースが多く、親は自分たちが亡くなった後、子どもがどうなるか不安を抱えている。ある元幹部社員は「恵の経営陣は『親亡き後、行き場のない人たちの住まいをつくるんだ』と言っていた」と語る。 一方、別の元幹部社員は「確かに表向きはそう言っていたが、本音は違う」と証言。「社長たちは『お金をもうけて、会社を上場したい。そのためにどんどん事業展開していくんだ』と話していた」という。 ▽重度者向けに照準、「入れ食い」 障害福祉サービスを提供する事業所には、国や自治体から報酬(給付費)が支給される。サービス内容などに応じて細かく金額が決められていて、利用者の障害が重いほど報酬が多くなる仕組みになっている。 ある元幹部社員は「『報酬が高いから』と、支援態勢が整っていないのに、重度の人をどんどん入れていた」と話す。 恵の訪問看護ステーションに勤めていた看護師も同様の証言をする。「障害が重い場合、1日に複数回、訪問看護を入れることができ、訪問看護の報酬も増えるので、どんな障害者でもとにかく受け入れてしまっていた」