【専門医が解説】認知症の人に言ってはいけない「5種類のNGワード」とは?
もの忘れから少し進行すると「季節や時間、今いる場所、人」がわからなくなることがある。そんなときの対応方法を、認知症専門医、「メモリーケアクリニック湘南」院長の内門大丈さんに聞いた。 (注)以下、特別な注意書きがない場合は認知症=アルツハイマー型認知症とする。
わからないこと=悪いことと捉えない。質問して試さないで!
記憶障害と並んで早い段階から現れる症状は、季節や時間がわからなくなることだ。症状が進むと次に場所が、さらに進むと人がわからなくなる。よく「娘の私の顔がわかってもらえなくてショックだった」という話を聞く。こうなるとかなり心配になる。 「これは専門用語では見当識障害というのですが、『今がいつなのか?(現在の年月日、季節、曜日、時刻)』、『今どこにいるのか?』、そこにいるのが『誰なのか?』が把握できなくなります。アルツハイマー型認知症の場合、上記の順番で現れることが多いですね。また、70種類もあるといわれている認知症の中で、アルツハイマー型認知症に次いで、2番目に多い『レビー小体型認知症』にもよく現れます。 レビー小体型認知症とはレビー小体というタンパク質が蓄積されて、初期には目立たないこともありますが、やがて海馬、側頭葉の萎縮が起こり、後頭葉の血流が低下します。おもな症状はこの見当識障害をはじめ、注意障害(気をつけるという機能の低下)を中心とした認知機能障害、幻視、動作が遅くなる、震え、抑うつなどです。老年期に多く見られますが、早い人は40歳頃から発症するケースもあります。こうした時間や場所、人がわからなくなる症状も発症の仕方や重症度も、人により異なります。意識が明確なときとぼんやりするときが、交互に現れることもあります」(内門先生) 周囲の家族も不安から、つい「なんでわからないの?」と叱ったり、「今日は何日?」などと質問して、わかっているかどうかを確かめようとしたりしてしまいがちだ。 「確かにクリニックでは症状の進行具合を確認するために神経心理学的検査を行います。それは、今日は何年、何月、何日、何曜日ですか?といった、記憶力や時間や場所を正しく認識する能力をチェックすることも含まれます。しかしそれを、家族やまわりの人が日常的に行ったら、本人にはストレスでしかありません」 《NGワード》 否定/「そうじゃない」「また間違えた」 修正/「ここにあるよ」「さっきも言ったでしょ」「ちゃんとして」 試す/「今日は何月何日?」「ここはどこ?」 詰問/「アレとかソレとか、いったい何のこと?」「何を言ってるの?」 注意/「気をつけてよ」「〇〇はしないでね」「危ない!」 しっかりしてほしい、元に戻ってほしい思いから、つい上記のような言葉を発していないだろうか? 「しかし、残念ですがこうした言葉で元に戻ることはありせん」