子ども食堂、資金足りない 安心できる場所「守りたい」 国の支援急務
全国各地に広がる子ども食堂が、物価高騰などが追い打ちをかけ、資金繰りに苦しんでいる。子どもの居場所づくりなど地域で役割を発揮する子ども食堂。農家やJA、企業などの寄付があっても、「善意での活動継続が難しい」などの声が出ている。 ■徳島 「おかえり」。放課後、続々と帰ってくる中学生らにシイタケ農家の尾崎みゆきさん(37)らが笑顔で声をかける。 毎週木曜日の夕方に開く、徳島県佐那河内村の子ども食堂。楽しかった村の記憶を残してほしいという思いと、特に思春期である中学生の居場所づくりを目的に、昨年9月から、子育て中の有志4人を中心に運営している。 大人も含めて50人前後が毎週参加。費用は高校生以下が無料、大人は300円だ。尾崎さんは「ワイワイガヤガヤして、大人も楽しんで運営している」という。中学2年の仲野結さん(14)は「みんなと夜ご飯を食べて、遊べて、最高」と楽しむ。 リーダーの山木麻記さん(43)は「家庭や学校だけではない子どもの居場所をつくりたかった。あなたのままでいいんだよという雰囲気で、くつろいでほしい」と話す。 メニューは、ご飯、汁物、おかずを数種類用意する。食材は善意で農家らが野菜などを提供してくれる他、山木さんがなるべく安くスーパーなどで肉や牛乳などを買う。 運営は手応えとやりがいを感じている一方、悩みもある。運営する大岩俊介さん(41)は「生鮮食品に調味料、そして思春期の子が大好きな肉は欠かせない。資金繰りが最大の課題」と明かす。村や県の助成事業に該当せず、今後も資金確保の見込みがない。運営者で資金を持ち出すなどでやりくりする中、大岩さんは「この場所を守りたい。続けたい」と模索する。 ■長野 217の子ども食堂がある長野県。各地域に応援プラットフォームがあり、JAや企業などから寄付を募る仕組みがある。それでも、運営は厳しいという。県は「多くの子ども食堂が物価高騰による影響を受けている。一方、物価高騰で子ども食堂のニーズは高まっていて、運営費確保が喫緊の課題」(次世代サポート課)とする。
半数が課題に直面
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえによると、2023年度の子ども食堂数は9131カ所と年々増えている。ただ、昨年末の調査では、半数が資金面に課題を抱え、9割が物価上昇の影響を受けていた。 政府は昨年12月、「こどもの居場所づくりに関する指針」を閣議決定した。改正食料・農業・農村基本法では食料寄付の円滑化に向けた環境整備や必要施策について明記され、こども家庭庁でも具体支援政策を検討している。 むすびえは「資金難は長年の問題。自治体の支援にも差があり、課題解決に特効薬がない。政府も支援を進めるとしていることから、今後の政策に期待したい」とする。 (尾原浩子)
日本農業新聞