松本穂香”鹿乃子”の笑顔がまぶしい…鈴鹿央士”左右馬”の発想の転換に驚いたワケ。『嘘解きレトリック』第10話考察レビュー
嘘が分かるということは、本当が分かるということ
フミが、「どうして祝先生は、鹿乃子とうまくやれるのでしょうか?」と聞いたとき、左右馬(鈴鹿央士)は「嘘を暴かれるより、本当のことを信じてもらえない方が面倒なんです」と答えていた。「嘘が分かるってことは、本当が分かるってことでしょ?」と。 フミも「そんなふうに考えたことなかった」と言っていたが、わたしも「発想の転換がすごいな」と思った。 『嘘解きレトリック』を観ている友人から、「もしも、鹿乃子のように嘘を聞き分ける能力がある子が近くにいたらどうする?」と聞かれたとき、わたしは「何もしゃべれなくなっちゃうかもしれない」と答えた。 というのも、誰かと話をするときに、いちいち「これは真実なのか?」「これは、嘘か?」と考えたことがないから。もしも、嘘の音を鳴らしてしまったら、相手の心を傷つけてしまうのではないか? と思うと、怖くなる。 そのため、「わたしの言葉で、あの子を傷つけるんじゃないか」「傷つけないように取り繕って。嘘にならないように。それが返って嘘になるんじゃないか」と言っていたフミに、大共感してしまった。 一方、左右馬は鹿乃子と関わるとき、“嘘をつかないように気をつけよう”とは思っていないのだろう。彼はただ“真実を伝えるようにしよう”と考えているだけ。だから、一緒にいてもしんどくならないのだと思う。
鹿乃子(松本穂香)の晴れやかな笑顔
もちろん、いちばん辛い思いをしてきたのは、嘘を聞き分けるという奇妙な能力を持って生まれた鹿乃子だ。しかし、母親のフミも、彼女と同じように、たくさん悩んできたのだと思う。 大切だからこそ、自分の言葉で娘を傷つけてしまったら…と考えると、怖くなる。嘘をつかないように、嘘をつかないように、と自分に言い聞かせているうちに、何が嘘で、何が真実なのか分からなくなってしまった瞬間もあったのではないだろうか。 「少しの嘘を恐れて、たくさんの本当を伝えていなかった。大好きよ、鹿乃子」 左右馬と一緒にいても、どこか寂しそうな表情を見せることが多かった鹿乃子が、フミにこの言葉をかけられたとき、つきものが取れたように晴れやかな笑顔を見せていた。きっと、母親から拒絶されたかもしれない…というトラウマが、彼女の心のなかに大きな影を落としていたのだろう。